2014.05.19

【西日本学生春季リーグ戦・特集】磯川孝生監督、就任初の大会で徳山大を4季ぶりの優勝に導く

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 監督初さい配で初優勝! 西日本学生春季リーグ戦は混戦の中、徳山大が予選Bグループで1位となり、決勝でAグループ1位の九州共立大を6-1で下して4季ぶり18度目の優勝。今春、守田武史氏に代わって監督に就任した磯川孝生監督が初陣を飾った。

■決勝戦 成績
(注)同リーグは抽選によって試合順が決まる

徳山大 ○6-1● 九州共立大
74 古川恭円 Tフォール、0-10 椿 和浩
70 元井淳貴 フォール、6-4 濱口祐志
86 掛谷亮輔 フォール、6-0 嘉陽研人
57 濱本 翼 フォール、3-1 合代潤心
65 深迫友真 8-2 森 俊樹
61 糸数誠也 Tフォール、11-0 影山大洋
125 山口直人 Tフォール、14-3 柏本 心

 決勝の1番手、74kg級はフォール負けと出鼻をくじかれてしまったが、70kg級の元井淳貴がフォールで巻き返す、流れは一気に徳山大に傾いた。86kg級の掛谷亮輔、57kg級の濱本翼まで3試合連続でフォール勝ちし、3勝1敗と“王手”をかけた。

 ここで登場したのは65kg級の深迫友真。6分間攻めの姿勢を崩さす8-2で試合終了のブザーを聞いた瞬間。徳山大の王座返り咲きが決まった。

 試合前、磯川監督から試合メンバーに「決勝戦で試合ができる7人に選ばれたことを、まずはうれしく思いなさい。徳山大学に送ってくれた保護者、高校の先生たちに感謝の気持ちをこめて試合をしなさい」と告げという。この言葉で一気にムードが高まったことも決勝で圧勝した要因だ。

 磯川監督は「日頃の積み重ねを学生が信じてくれて闘ってくれた。試合の選手、それ以外の選手全員を褒めてあげたい」と、開口一番に学生たちへねぎらいの言葉をかけた。

 磯川監督は東日本の強豪、拓大出身でロンドン・オリンピックにも出場した。「近年は、西日本でも東日本とそん色ない選手がたくさん出てきている」と、西日本のレベルが上がっていることを実感している。「そのレベルが高い選手に勝ち切れた。私たちが臨んだ試合順ではなかったが、個々の選手が自分の試合に集中してくれた」と、内容面も高評価を与えた。

■鬼門の“準決勝”で福岡大に昨年のリベンジ

 決勝よりもヤマ場だったのは、予選Bグループの最終戦、福岡大との一戦だった。昨年の春、同じグループのライバル福岡大と勝敗、勝ち数、勝ち点まで同点。フォール数が1つ足りずに2位となり、決勝進出を逃した悔しい過去がある。掛谷主将は「去年は悔しい思いをした。僕たちは決勝に行けば、強いんです。そこに行くまでにいつもコケてしまう」と、事実上の準決勝となった鬼門の福岡大戦は相当な気合をいれて臨んだ。

 だが、昨季春秋ともに2位と安定した力を誇る福岡大のが城は高く、先に大手をかけられる苦しい状況。なんとか、3-3のタイに戻して勝負は最終の86kg級、掛谷主将に託された。

 同主将は「本来なら4-2と先に勝負が決まる予定だったが、3-3で勝負が回ってきてしまい、足が動かなくて…」と、緊張で動きが鈍ったことを告白。失点するなど厳しい展開だった。だが、「昨年、きん差で負けたことが頭をよぎりました」と悔しさを思い出して奮起。最後は7-3で勝利をおさめてチームの4勝目を挙げて、決勝進出を決めた。

■練習から優勝する地盤ができていた

 今大会の勝因は、磯川監督就任をきっかけに学生たちが自主的に練習に取り組んできたこと。磯川監督も「学生主体で練習をさせています」と話せば、掛谷主将も「メニューは磯川監督と話し合って僕が決めてやってきました。自分たちで考えて今回に向けて走り込みを多くしたことも、結果につながった」と振り返った。

 2週間前のゴールデンウィークは、和歌山、富山、岡山などから高校生が徳山に集結して実りある合宿を行った。掛谷主将は「高校生と練習するなんて意味がないと思われがちですが、高校生は変わった技をしかけたりする。その対応をしてきたので、今回、どんな選手と対戦しても慌てず対応ができました」と効果てきめんだった。

 掛谷主将は春秋連覇を宣言したが、磯川監督は“連覇”の文字には注力(力を入れること)しなかった。「連覇よりも、学生がベストを尽くす。やってきたことを発揮できる部分に焦点を当てていきたい」―。この内容が秋も展開できれば、おのずと連覇という結果はついてくるはずだ。