2014.05.02

【特集】イラン相手に殊勲の勝利! 海外初メダルを獲得した男子グレコローマン98kg級・大坂昂(三菱電機)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=池田安佑美)

 イランに勝って海外で初のメダル獲得! 4月23~27日にカザフスタン・アスタナで行われたアジア選手権の男子グレコローマン98kg級は、プレーオフの末に日本代表入りを果たした大坂昂(三菱電機)が強豪イランを破っての銀メダル獲得。海外初メダルを手にした。

 準決勝のヤデガー・イマム国際大会2位のアリ・アリヤリフェイザバディ(イラン)戦は第2ピリオドの終盤、2-2のビッグポイントで負けている状況から場外際で豪快な腰投げを決め、6-2で競り勝って決勝進出を決めた。

 決勝は地元カザフスタンの選手にテクニカルフォールで敗退したが、銀メダルを手にした大坂は「海外で初めてのメダルです。今までは1回戦を勝てるかどうかだった。僕のレスリングが通用するところまで来ているのかもしれない」と感慨深げだった。

 イラン戦は、「日本人は体力、持久力で勝負する」という手本のような試合だった。残り30秒で2-2と同点ながら、ビッグポイントの差で大坂が負けていた。相手は無理せず、大坂の攻撃をしのいでの時間稼ぎにきていた。セコンドから「行けっ!」と声が飛ぶと、大坂は組み付ついて相手を場外際に追い詰めた。

 「組んだら、相手はすんなり下がったんです。このままでは、場外に押し出す時に(投げ等で)かわされるな」と思った大坂は、慎重に押し出しに入った。すると案の定、相手は大坂の力を利用して、投げの態勢に入った。その動きが想定内だった大坂は、逆に豪快な腰投げを決めて大逆転の4点を獲得。ファイナルへのキップを勝ち取った。

 決勝は、イラン戦とは逆に相手のスタートダッシュに飲まれて秒殺でテクニカルフォール負け。準決勝と決勝はあまりにも差がある内容だったが、大坂は、「どんなに強い選手でも、ばててくれれば勝てるということが分かった。カザフスタン戦は相手がばてる前にやられてしまった」と、今大会で海外選手に勝つための勝利の方程式を体感したようだ。

■平日はフルタイムで仕事、しかし合宿などで優遇あり

 3月に早大を卒業し、三菱電機にアスリート枠で入社。平日は朝9時から17時半までフルタイムで仕事をしている。「完全にプロとしてレスリングを続けた方がオリンピックには近いけれど、レスリングだけで人生は終わらない。卒業したら仕事をしたいという気持ちがありました」。

 アスリート枠の特典は、試合や合宿などがあったら無条件で競技を優先できるという点。「週3回は15時までの勤務ですので、練習時間に余裕ができます」と、学生時代に学業とレスリングを両立してきた感覚で競技を続けられるようだ。

 練習は引き続き早大で行っている。大学院に行った友人にトレーナー役を依頼。体幹トレーニングのメニューを作ってもらったところ、肉体改造にも成功した。「体重も102kgまで増えました。卒業前は遊ぶ予定でいたのですが、プレーオフのため、ずっとトレーニングしていました。おかげで勝てました」と、仕事、練習ともに順調をアピールした。

 「次の目標は6月の明治杯(全日本選抜選手権)です。僕はまだ正式なナショナルメンバーではないです。斎川さん(哲克=昨年世界5位)に勝って優勝したいです」。アジア銀と飛躍を見せた大坂がこの勢いで国内トップを捕れるか!?