2014.05.01

【JOC杯ジュニア・特集】練習相手不足をプラスに変えて快進撃…男子フリースタイル120kg級・山本泰輝(静岡・飛龍高)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 JOC杯ジュニアの男子フリースタイル120kg級は、約1ヶ月前の全国高校選抜大会優勝の山本泰輝(静岡・飛龍)が、前年王者を含めて大学生3選手にテクニカルフォール勝ちし(他に不戦勝1)、高校生にして優勝を達成。昨年のカデット・グレコローマン100kg級に続いての2連覇だ。

 現在の年齢区分になってから、フリースタイルの最重量級で高校生が優勝したのは、2005年の荒木田進謙(青森・光星学院高=現全日本王者、警視庁)だけ。荒木田は判定勝ちもあり(注=当時のルールは2分×3ピリオドのピリオド制)、全試合テクニカルフォール勝ちの内容は荒木田以上の素材ということになる。

 昨年王者を破っての優勝は、まぐれ勝ちではない何よりの証明。山本は「うれしいです。相手を崩してタックルに入り、ローリングで攻める自分のレスリングができました」と勝因を話した。

 昨年のインターハイは96kg級でベスト8に終わったが、東京国体で4試合にテクニカルフォール勝ちして優勝。今年3月の全国高校選抜大会でも5試合をフォール勝ち、またはテクニカルフォール勝ち。この半年ちょっとで急速に力をつけ、全国のトップにのし上がった。その要因は?

 答えは、意外にも“練習相手の不足”だという。チームには自分のように体の大きい選手はおらず、練習相手は必然的に体の小さい選手となる。パワーではまさっても、スピードではかなわない選手ばかり。そのスピードについていけるように頑張ってきたところ、重量級とは思えないスピードが身につき、大きな武器になったという。

 相手よりスピードでまさることで、崩しなども効果的に使えるようになり、攻撃の糸口がつかめるようになった。マイナスをプラスに変えての実力アップ。練習環境が恵まれてなくとも、実力をつける方法はいくらでもある。

■年長で競技を始め、中学の途中から一気に飛躍

 幼稚園の年長の時に静岡・Fujiモンスターズでレスリングを始めた。全国大会は2位や3位が多かった。体はそれほど大きくなく、小学校6年生の時は、ほば真ん中の階級である45kg級で3位。全国一になることなく中学へ進んだ。「中学の途中までは弱かったです」。

 転機となったのは、けがをしてマットでの練習ができなかったこと。筋力トレーニングに力を入れると体が大きくなり、パワーもついて実力もつき、中学3年生の時の全国大会で初めて優勝を勝ち取った。「練習できないことが悔しく、そのエネルギーをぶつけた、という部分もあります」。マイナスをプラスに変える力は、この時から持っていたようだ。

 この優勝により、昨年の世界カデット選手権グレコローマン(セルビア=1勝2敗で8位)に続き、世界ジュニア選手権への出場権を獲得した。スタイルが違うとはいえ、外国選手の体の大きさとパワーは経験済み。「パワーをアップさせ、チャレンジャーのつもりで当たっていきたい」と謙遜する一方、「高校生でジュニアの日本一になれた自覚を持って臨みたい」とも。

 日程は、インターハイ(神奈川)が終わってすぐに世界ジュニア選手権(クロアチア)となる。ハードな夏となりそうだが、シニアの日本重量級が上昇の兆しを見せているだけに、力強く飛躍し、日本重量級の飛躍に貢献してほしい逸材だ。