※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
大学最初の大会を優勝で飾った男子グレコローマン60kg級の文田健一郎(日体大)
さすがに全試合フォールかテクニカルフォールというわけにはいかず、4試合のうち2試合は6分間を闘っての勝利だったが、失点はなく、全国高校生グレコローマン&国体3連覇の実力を発揮した。「新環境で、親元を離れての初の大会。不安もありましたが、試合が始まれば吹っ切れ、思い通りに動けました。しっかり親離れできたな、と思います」と言う。
昨年の全日本選手権は55kg級に出場した。60kg級という階級は1階級アップでの出場となるが、高校生の大会はすべて60kg級で出場していたので、特別な違和感はなかった様子。シニアの最軽量級が59kg級となったことで、必然的に体重を増やさなければならなかったわけで、新階級への移行は自然の流れでできそうだ。
■最大の敵は、相手を過大評価してしまうこと
日体大にはフリースタイルで高校三冠王者(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)の樋口黎(茨城・霞ヶ浦高卒)も進み、文田とともに新人の二本柱としての活躍が予想された。樋口が肩の亜脱きゅうで今大会を棄権し、その分、文田への期待が高まった。樋口からも同期選手からも「頑張れよ」と言われ、期待大きさ感じたそうだが、「プレッシャーとはならなかった。すべてをエネルギーに変えることができました」とにっこり。 決勝でそり投げを仕掛けた文田
大会初日の夜、カザフスタンで行われているアジア選手権で59kg級の大田忍(日体大)が世界王者を破って銀メダルを取ったというニュースが入った。「すごく高い壁になりましたね」と苦笑いしながら、「高い壁の選手が身近にいて、いつも練習できる環境にいるのは幸せなこと。技術も体力も学ばさせてもらい、多くのことを吸収したいと思います」と言い、気持ちの高層につながっている。
昨年までは、いつも父(敏和=韮崎工高監督)がセコンドにいてアドバイスを送っていた。この大会でセコンドにいないのは当然だが、閉会式(ジュニアのみ)の時も、高校選手の引率のため息子の表彰を見ることなく会場を後にした。「一人で闘っていきなさい」というメッセージ? 母船を離れた文田の新たな旅立ちが始まった。