2014.04.30

【JOC杯ジュニア・特集】注目という重圧も感じす、新天地で好スタート…男子グレコローマン60kg級・文田健一郎(日体大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 男子グレコローマンで若手成長株ナンバーワンと言える60kg級の文田健一郎(山梨・韮崎工高~日体大)がJOC杯ジュニアで4試合に勝って優勝。オリンピックゴールドメダル賞を受賞し、幸先いい大学生活のスタートを切った。

 さすがに全試合フォールかテクニカルフォールというわけにはいかず、4試合のうち2試合は6分間を闘っての勝利だったが、失点はなく、全国高校生グレコローマン&国体3連覇の実力を発揮した。「新環境で、親元を離れての初の大会。不安もありましたが、試合が始まれば吹っ切れ、思い通りに動けました。しっかり親離れできたな、と思います」と言う。

 昨年の全日本選手権は55kg級に出場した。60kg級という階級は1階級アップでの出場となるが、高校生の大会はすべて60kg級で出場していたので、特別な違和感はなかった様子。シニアの最軽量級が59kg級となったことで、必然的に体重を増やさなければならなかったわけで、新階級への移行は自然の流れでできそうだ。

■最大の敵は、相手を過大評価してしまうこと

 日体大にはフリースタイルで高校三冠王者(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)の樋口黎(茨城・霞ヶ浦高卒)も進み、文田とともに新人の二本柱としての活躍が予想された。樋口が肩の亜脱きゅうで今大会を棄権し、その分、文田への期待が高まった。樋口からも同期選手からも「頑張れよ」と言われ、期待大きさ感じたそうだが、「プレッシャーとはならなかった。すべてをエネルギーに変えることができました」とにっこり。

 2020年東京オリンピックへ向けて、どのメディアも6年後を見越した成長株へ注目を始めている。この大会も、昨年まではほとんどいなかったテレビ局数社が取材に訪れ、文田も試合後、在京テレビ局からのインタビューを受けた。こうした注目も「プレッシャーにはならないです」ときっぱり。プレッシャーといえば、「闘う相手を想像以上に大きく考えてしまい、過大評価してしまって緊張してしまうことがある。特に海外では。そこを直していきたい」とのことで、目に見えない最大の敵は“幻想”のようだ。

 大会初日の夜、カザフスタンで行われているアジア選手権で59kg級の大田忍(日体大)が世界王者を破って銀メダルを取ったというニュースが入った。「すごく高い壁になりましたね」と苦笑いしながら、「高い壁の選手が身近にいて、いつも練習できる環境にいるのは幸せなこと。技術も体力も学ばさせてもらい、多くのことを吸収したいと思います」と言い、気持ちの高層につながっている。

 昨年までは、いつも父(敏和=韮崎工高監督)がセコンドにいてアドバイスを送っていた。この大会でセコンドにいないのは当然だが、閉会式(ジュニアのみ)の時も、高校選手の引率のため息子の表彰を見ることなく会場を後にした。「一人で闘っていきなさい」というメッセージ? 母船を離れた文田の新たな旅立ちが始まった。