※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美) 準決勝で世界王者を破った太田忍(日体大)
昨年末の階級区分の変更で、グレコローマンの最軽量級は55kg級から59kg級に引き上げられた。太田は60kg級から落とす形で59kg級に臨む一方で、北朝鮮のユンは体重を4kgアップして臨んだ。体格の差は太田に分があったが、相手は世界チャンピオン。「めちゃくちゃ強かった」と、序盤は投げ技を食らって大量失点するなど完全に北朝鮮のペース。
太田はシニアの国際大会は今冬が初という若手選手。「自分はエントリーの中で一番弱いと思っていた」と振り返り、開き直ってのマットだった。「もう、行くしかない、と思ってかけた技がたまたまかかりました」と、がぶり返しがきれいに決まって4点。さらに、押さえ込んで2点を追加した。 決勝で昨年王者に投げられる太田。
この勢いで決勝も勝ってアジア王者へ、といきたいところだったが、昨年60kg級優勝でロンドン・オリンピックにも出場しているエルムラト・タスムラドフ(ウズベキスタン)にテクニカルフォール負け。「世界チャンピオンに勝ったといううれしさより、決勝で負けた悔しさの方が大きいです。決勝では常に後手に回ってしまった。それを改善させない限り、世界では通用しないと思う」と悔しさをにじませた。
だが、初のアジア選手権で表彰台を経験し、ナショナルチームとしての自覚は芽生えた模様。昨シーズンはシニアの国体を初制覇した。その勢いのまま世界の舞台でも大暴れしたアジア選手権だった。
![]() 世界王者との一戦。最初に豪快に投げられてしまった |
![]() 投げ返して攻勢をとった太田 |