2014.04.27

【アジア選手権第4日・特集】初出場で世界王者撃破! 価値ある銀メダル…男子グレコローマン59kg級・太田忍(日体大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=池田安佑美)

 世界王者を下しての銀メダル獲得! アジア選手権の男子グレコローマン59kg級は、全日本選手権60kg級2位の太田忍(日体大)が決勝で敗れたものの、準決勝で昨年の世界選手権55kg級のユン・ウォンチョル(北朝鮮)に10-6で逆転勝ちするなど、価値ある銀メダルを獲得した。男子では両スタイル合わせて今大会初の銀メダルとなった。

 昨年末の階級区分の変更で、グレコローマンの最軽量級は55kg級から59kg級に引き上げられた。太田は60kg級から落とす形で59kg級に臨む一方で、北朝鮮のユンは体重を4kgアップして臨んだ。体格の差は太田に分があったが、相手は世界チャンピオン。「めちゃくちゃ強かった」と、序盤は投げ技を食らって大量失点するなど完全に北朝鮮のペース。

 太田はシニアの国際大会は今冬が初という若手選手。「自分はエントリーの中で一番弱いと思っていた」と振り返り、開き直ってのマットだった。「もう、行くしかない、と思ってかけた技がたまたまかかりました」と、がぶり返しがきれいに決まって4点。さらに、押さえ込んで2点を追加した。

 攻勢が逆転した終盤、勝負に出たユンは強引に組みついて投げを打つが、太田のバランスが上回り、逆にフォール寸前まで追い込むなどして追加点。世界王者から10点を奪って快勝した。手放しで喜ぶかと思われたが、太田は「フォールできそうなところが2回もあった。押さえるところは押さえていかないといけない」と、すぐに反省点を洗い出し、喜びの表情は少なかった。

 この勢いで決勝も勝ってアジア王者へ、といきたいところだったが、昨年60kg級優勝でロンドン・オリンピックにも出場しているエルムラト・タスムラドフ(ウズベキスタン)にテクニカルフォール負け。「世界チャンピオンに勝ったといううれしさより、決勝で負けた悔しさの方が大きいです。決勝では常に後手に回ってしまった。それを改善させない限り、世界では通用しないと思う」と悔しさをにじませた。

 だが、初のアジア選手権で表彰台を経験し、ナショナルチームとしての自覚は芽生えた模様。昨シーズンはシニアの国体を初制覇した。その勢いのまま世界の舞台でも大暴れしたアジア選手権だった。


世界王者との一戦。最初に豪快に投げられてしまった

投げ返して攻勢をとった太田