※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美) 決勝で闘う伊藤友莉香(自衛隊)
決勝は前半で0-4とリードされる苦しい展開。伊藤の悪いくせが出てしまった。「むやみにタックルに行くなとコーチにも言われているのに、それが出てしまった。自分でもこれではだめだと入りながら思っている」と、前さばきなしのタックルを何本も繰り出してしまった。相手の態勢は崩れていないため、簡単につぶされてしまってポイントにつなげられなかった。
セコンドからは「もっと相手を動かして、落ち着いて入れば取れる!」との声が飛ぶ。後半は同じ轍(てつ)は踏まないとばかりに、組み手を駆使して相手を崩してからのタックルに切り替えた。すると、面白いよう連続でテークダウンを奪って、あっという間に8-4と“ダブルスコア”の大差をつけて試合終了。「優勝」の二文字を手に入れた。
準決勝でカザフスタン選手と闘う伊藤
63kg級は、絶対女王だった伊調馨(ALSOK)が階級区分の変更を機に階級ダウンして抜け、昨年の全日本選手権は一気による争いとなった。伊藤にも十分に全日本女王のチャンスがあったが、渡利璃穏(至学館大)に屈して2位。6月の全日本選抜選手権で渡利に勝って優勝しなければ、今年のアジア選手権、世界選手権は見えてこない。
「今の段階では世界選手権やアジア大会の候補にも入っていないので、選抜で優勝して日本代表になれるように頑張りたい。渡利選手にも、今勝っておかないといけないと思う」。伊調が抜けた63kg級の次世代エースの座を伊藤は奪取できるだろうか―。