※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美) 3位決定戦で闘う保坂健(早大)
悔しい涙の銅メダル! アジア選手権の男子フリースタイル70kg級は、3月の代表決定プレーオフを勝ち抜いて代表入りした保坂健(早大)が3位決定戦でインド選手を破り、国際大会初の3位入賞を果たした。しかし、「悔しいです。初戦から全然ダメでした。最後も気持ちで負けていました」と、涙を流して悔しがった。
初戦(2回戦)のタジキスタン戦は7-0と大量リードを奪い、さらにフォールへ追い込んでレフェリーとジャッジが手を挙げる状況にまで相手を追い詰めた。だが、「もう、フォールだと思って力をゆるめてしまった。そこで体勢を入れ替えられてしまった。油断しました」と、逆転フォール負けを喫した。
気持ちを切り替えて臨んだ3位決定戦では、アクシデントが起こった。相手のインド選手が体全身にオイルを塗ってマットに上がり、審判が試合前に、タオルで入念にふき取りを命令し、試合開始が遅れるという異常な雰囲気となってしまった。
■相手のオイルを非難せず、追い上げられたことを反省
タオルでふき取ったところで、汗をかくにつれて相手の体はすべっていく。保坂は得意のタックルを繰り出すが、明らかに滑って足を取り逃す場面が見られた。その中でも6点を奪ってリードを広げたが、後半は徐々に失速。最後はバックを取られるなどして6-3のスコアで終了した。
インド選手のオイルをチェックする国際レスリング連盟の齋藤修審判員(日本協会審判委員長)
「オイルを塗っていましたが、(試合では)審判が気づかない場合もあるし、その選手がホームの選手だったらなおさら。どんな状況でも勝っていかないと」と、オイルは気にしなかったようだが、終盤の失点は反省材料。「最後、やらなくていいところでポイントを与えてしまった。本当に悔しい…。勝った気がしないです」と目を潤ませた。
階級区分が変わり、自身の66kg級がなくなった直後、「レスリングを続けるかどうか考えたい」とも発言した。70kg級が非オリンピック階級ながら新設されたことでモチベーションは回復。「コーチとも相談し、70kg級で世界を見てから最終的に74kg級でオリンピックを目指したい」。高い目標を見据える保坂は、初のアジア3位でも喜ぶことはなかった。
次の目標は6月の明治杯全日本選抜選手権。今回は特別試合(プレーオフ)を経ての日本代表だったが、「今度はきちんと優勝し、正式なナショナルチームの一員になりたい」ときっぱり宣言した。