※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=池田安佑美)
2度目のアジア選手権で銅メダルの森下史崇(ぼてぢゅう)
昨年は優勝を期待される中、3位決定戦で敗れて5位とメダルに手が届かなかった。悔しい思いをしていただけに、「メダル取れてよかったです」と、表彰台とメダルをかみしめた。
フリースタイル最軽量級は、以前から「アジアを制する者は世界を制す」と言わんばかり激戦区だ。国際レスリング連盟(FILA)の現在のランキングでは、上位4名がイラン、インド、モンゴル、日本(森下)とアジア勢が占めている。
今回は上位3人選手は出場しなかったが、イランやモンゴルは2番手選手でも強く、森下を苦しめた。準決勝のモンゴル戦は「組んでから強いスタイルに苦手意識がある」と、投げ技を2回も決められて大量失点してしまった。「勝ち負けより、自分のペースでできなかったことが悔やまれる」と、組んで試合を進めてしまったことを後悔した。
3位決定戦の相手のレザザデンは、3月のワールドカップ(米国)のイラン代表と力がある選手。「初めて対戦しましたが、(勝ったけど)ずっと接戦だった。その上にはイラン1番手のハッサン・ラミヒがいるのに」。イランの2番手選手にシーソーゲームのような展開で。コーションの差で競り勝ったが、完勝できなかったことには悔しそうな表情を浮かべた。
和田貴広監督(国士舘大教)は、森下の銅メダルに「今回は公式大会で結果が求められる。その中で形として記録が残ったことは評価できる」と話したが、「試合内容は、早い段階で攻撃にもっていけなかったり、追加点をどん欲に取りにいけなかった。まだ、2分3ピリオドのスタイルが体に染みついているのかもしれない。それと失点が多かったので、ポイントをやらない練習が必要。オリンピックを目指しているならば、シーソーゲームをやっていては駄目。能力がある選手なので、内容にこだわってほしい。失点は何が悪かったのか研究して改善してほしい」と課題を挙げた。
特に指摘したのは、モンゴル戦で組み負けた点。「モンゴル戦で不用意に胸を合わせるのが致命的。使う技、使わない技を整理しておく必要がある」と付け加えた。
課題が多く見つかったアジア選手権だったが男子メダル1号に輝いた森下。日体大を卒業し、4月からは一人暮らしを始め、食事も自分で作るなど栄養の自己管理も始めた。「アジアは世界のトップレベルが集まっている。アジアでもしっかり勝っていけば世界でも通用するはず。6月の全日本選抜選手権で勝って、世界選手権、アジア大会と結果を残したい」と今大会を糧に、さらなる進化を誓った。