※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
アジア選手権前の最後の合宿がスタート
西口茂樹・男子グレコローマン強化委員長(拓大教)は「追い込む練習をやらなければならないが、けがのないように乗り切ってほしい」と話し、代表選手のコンディショニングに細心の注意を求めた。
代表選手の大半がこの冬、今やグレコローマン王国となったイランと欧州の伝統国のハンガリーに遠征し、合宿と試合をこなした。昨年12月には世界選手権で2人の王者を輩出した韓国が来日して日韓合同合宿を実施してiいる。世界の強国を相手にして実力アップしていると思われるが、西口委員長は「まだ甘さがある」として、今年度はさらに厳しい“セレクション”を実施することを口にした。
夏にはロシア遠征を予定しているが、各階級1選手ではなく、「全体で3選手、多くても4選手」という狭き門を作るという。「国内で勝てば海外遠征、ではない。世界で勝てる選手を連れていく」と厳しい表情で話し、選手に、より高い意識を求めた。当然、今回のアジア選手権での試合内容も“査定”の材料になるのだろう。
角一哲児トレーナーによるトレーニング
重量級は全体的にパワーが不足しているため、マルチサポートのスタッフとして昨年12月から選手の筋力トレーニングを全面的に指導してくれている角一哲児トレーナーに全面的にパワーアップ・トレーニングを任せ、外国選手と対抗できる体づくりに着手する。
角一トレーナーは「外国選手と比べると、日本選手の筋肉量は絶対的に少ない。いきなり筋肉を増やすことはできないので、とりあえずアジア選手権へ向け、今の筋肉量でどれだけ力を出し切れるかの練習をやりたい」と、今回の合宿のテーマを話す。基本はサーキットトレーニングで、疲れた中で筋力を出せるトレーニングをやるという。
長期的には、例えば、いま体脂肪が23%ある選手を18%にまで落とせば、その分の筋肉がつくわけで、それを目指したトレーニングを掲げる。
よく「日本選手は、パワーではどうやっても外国選手に勝てないから、スピードで」と言われる。パワーをつけることで、スピードが落ちてしまう危険はないのか? 角一トレーナーは「力をつければスピードが落ちる、というのは間違い。力がつけばスピードもつく。力をつけるトレーニングを重視するあまり、スピードをつけるトレーニングをおろそかにするから、誤解が生まれる」と説明する。力をつけてスピードもつく練習をやることで、パワー+スピードのある動きができるという。
この冬は、初めてレスリング選手の指導をすることになって、様子見のところがあったそうだ。今後は「思い切って(肉体改造に)チャレンジしてみたい」と、体力面での“革命”に挑む。
■負傷を乗り越え、新階級に挑む倉本一真
冬の遠征の成果を試すアジア選手権へ向けて練習するグレコローマン・チーム
ただ、新階級(倉本は59kg級)を経験せずに世界選手権の予選に出場することになり、従来から1kg多い減量の影響がどうかという不安は残る。「ふだんから節制していきたい。55kg級だった選手は小さくてやりづらいが、対応できるように頑張りたい。新しい階級なので、自分がチャンピオンだとは思っていない」と話し、新たな挑戦をスタートさせる。