※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
左から40kg級3位の福井紀夏、坂本涼子監督、32kg級優勝の笠井梨瑚
出場したのは32kg級の笠井梨瑚と40kg級の福井紀夏の2人の中学生。笠井は決勝(初戦)で藤邉喜愛(東伊豆ジュニア)を破って優勝、福井も3位入賞を果たした。公式戦初出場で2人とも入賞を果たすという幸先のいい滑り出しだった。
坂本監督は「2人とも、つい先日まで小学生でした。今回は4月1日から東京に合宿練習に来ました。そこで練習したことが出せました」と選手の頑張りを評価。課題としては「中学生になりましたから、もっと体力をつけなくてはならないし、技も正確にかけなくてはいけません」と、中学レベルへのステップアップを挙げた。
坂本監督は1992年世界選手権の57kg級チャンピオン。指導者としても中京女子大(現至学館大)で部長を務めた経歴を持ち、女子レスリング界では、どの部分でも“さきがけ”だった。
だが、坂本監督は「しばらくレスリング界から離れていたので、セコンドにつくのはとても緊張しました。ルールも変わりましたし、日々勉強です」と、すべてにおいて手さぐりの状態でやってきた。「中学生やカデット世代の選手を直接教えるのも初めて。指導者は私しかいませんので、自分が(しっかり)やっていかないといけない。勉強することがたくさんあります」と言う。
■「女子の指導者が増えれば、女子選手も増えます」
現在の部員2選手は坂本監督の自宅に下宿しており、私生活からマットの上までトータルで指導していくスタイル。「食事も作っていますし、お母さんスタイルでやっています。中学生はかわいいですね。すごく可能性がある年代です。人数が増えても、このスタイルでやっていきたいと思っています」と、指導方針を話した。
セコンドで選手を支える坂本監督
女子レスリングの1期生として活躍している指導者は、坂本監督のほかには、JOCアカデミーの吉村祥子コーチや、強豪キッズクラブの監督を務める成國晶子監督がいる。「吉村さんも成國さんも頑張っていますので、1期生として私も頑張っていきたい。女子の指導者が増えれば、女子選手も増えますから」と力強く語った。
現在の部員は、ともにレスリング経験者。だが、「初心者でも教えます。一般入学の生徒はもちろん、兵庫県の生徒でしたら、学内外を問わず教えていきたい。私も中学時代は柔道をやっていて、レスリングは高校から始めました。中学生から始めても伸びる可能性はあります」と、芦屋学園の門戸を全面開放して、女子レスリングの拡大に本気で取り組む姿勢を見せた。