※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
2階級にわたってジュニアクイーンズカップを制した川井梨紗子
「自分の目標はシニア。ジュニアでは(しっかり)優勝しなくてはいけないし、ここで負けていたら話にならない」と、自分にプレッシャーをかけて臨んだ。それだけの自信があったからこそ、プレッシャーをかけることができた。
2年前まで51kg級だったため、パワー不足が心配されるところだが、至学館大は女子最多の部員数を誇る大所帯。「大きい選手とたくさん練習を積み、3月の(2kgオーバーで計量する大会の)ワールドカップでも経験を積んできた」と、川井に51kg級の選手だったの面影は、もはやなかった。
昨年のこの大会の時にはレスリングのオリンピック競技除外問題があり、東京オリンピックを目指す選手たちは目標が揺らいでいた時期だった。川井も渦中の選手だった。環境、ルール、階級、すべてが変わった中での2連覇に、「1年間、あっという間でしたね」と笑顔を見せた。
東京開催のワールドカップからわずか3週間での試合。さらに、2週間後には、カザフスタンでのアジア選手権に出場する。2ヶ月で3大会をこなすことになるが、「体重調整も昔に比べればない」と、3大会とも万全を期す。
■筋肉をつけて58kg級に挑む!
高校進学の時から地元を離れ、愛知に拠点を移した。栄和人監督の指導に加え、川井のよき指導者となったのは、3月に急逝した吉田栄勝コーチだった。それだけにショックは大きかったが、ワールドカップでは全試合に出場して全勝と大活躍。勝利を吉田コーチに捧げた。
シニア58kg級での本格挑戦を前に、ジュニア59kg級で圧勝
55kg級がオリンピック階級でなくなり、川井の選択肢は53kg級か58kg級だった。オリンピック3連覇の吉田沙保里が53kg級、伊調馨が58kg級で闘うことを表明している。その中で58kg級を選んだ理由は、「体は沙保里さんより大きいのです。監督からも『筋肉をつけて自分の力を目いっぱい出せる階級にしなさい』と言われた」ことが決め手だった。
「オリンピックには自分が出たい。誰かを避けて58kg級にしていません。目標を達成するために、(ライバルを)倒します」と覚悟も決まっている。
次は3週間後のアジア選手権。「優勝して自信をつけたいです」と、58kg級リミット計量での初海外戦での飛躍を誓った。