2014.04.01

【全国高校選抜大会・特集】いなべ総合学園(三重)が圧巻の3階級制覇

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

団体戦の悔しさを晴らす3階級制覇だ! 全国高校選抜大会は、昨年の長崎インターハイ学校対抗戦で初の準優勝を遂げ、勢いに乗っているいなべ総合学園(三重)から、昨年60kg級王者の藤波勇飛、昨年のインターハイで1年生王者に輝いた50kg級の成國大志、そして55kg級の藤田雄大の3選手が優勝し、今大会最多の3階級制覇を達成した。

 今大会は学校対抗戦での優勝を見据えていた。だが、3回戦で昨年インターハイ決勝の相手、霞ヶ浦(茨城)と激突し、55kg級の藤田が敗れたことが響いて3-4で黒星。上位進出はならなかった。

■三者三様の試練を乗り越えての栄冠

 インターハイでは霞ヶ浦と120kg級まで勝負をもちこんでの敗退だった。今大会、いなべ総合学園は84、120kg級の重量2階級に選手をエントリーできず、5人での闘い。フルエントリーしてきた霞ヶ浦に勝つことは厳しい状況ではあった。

 それでも、いなべ総合学園のメンバー全員が本気で団体優勝を狙っていただけに、痛恨の黒星を喫した藤田は「自分のレスリングができなかった。自信も失ってしまった」と、ショックが個人戦に影響してしまうような落ち込みようだった。

 藤波俊一監督の「切り替えていけ」という一言で、なんとか立ち直った。55kg級は昨年50kg級王者の長谷川敏裕(東京・自由ケ丘学園)や関東王者の吉村拓海(埼玉・埼玉栄)など強者ぞろい。めまぐるしいシーソーゲームが展開されたが、その激戦を制して初の全国王者に輝いた。

66kg級の藤波は、今大会の予選から正式に階級をアップ。パワー不足の心配は無用と言わんばかりの攻撃で、初戦がテクニカルフォール、その他は決勝まで全部フォールで快勝した。階級アップの理由のひとつは、「60kg級がオリンピック階級ではなくなったから」。将来、65kg級で闘うことを視野に入れての決断だったようだ。

 3選手の中で最も薄氷の勝利だったのが、50kg級の成國だ。初戦から決勝まで何度もフォール体勢に持ち込まれた場面が見られ、まさに“なんとか勝った”という優勝だった。「小学生から今までで、一番悔しい内容」と絞り出すようにコメント。絶不調の理由に「体重の問題だと思う」と、12kgの減量を挙げた。 

 昨年の東京国体は問題なかった体重調整が、そのあとから厳しくなった。今では、身長も55kg級の藤田を超えている。12kgの減量後に体重を戻し過ぎてしまい、「足が動かなくて、自分にイライラして、空回りして、負の連鎖にはまった」と反省の言葉を並べた。

 その中でも全国の頂点に立てたのは、「勝負強さを備えていたから」と大物らしさを見せた。チーム事情もあるだけに、夏に向けて階級をどうするのかが、今後の課題だ。

 4月から入部してくる新入生も、中軽量級の選手ばかりで、今季はフルエントリーができない可能性が高い。だが、V2の藤波は、「全国制覇めざしていきます」と“今年こそ”悲願達成を誓った。