※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫ほか)
米国セコンドから声援を送る永島聖子コーチ
永島さんが米国女子コーチに就任したのは昨年7月。ポジションは、シニア部門ではアシスタントコーチで、ジュニア部門では監督。ナショナルチームの常設合宿所のあるコロラドスプリングズに住居を移して、ほぼ毎日、指導に取り組んでいる。
練習メニューは、週に2回ほどは永嶋さんが組み立てたもので、練習では自らスパーリングの相手となって、選手に胸を貸している。
永島さんは「アメリカのレスリング協会に携わって8か月が経ちました。大変だけど、人と人の関わりの部分はすごく楽しいです」と笑顔で話し、異国の地での指導者としてのレスリング人生は順調のようだ。
指導者としての本格デビューが米国というのは異例なことで、一番の壁となるのは語学といえる。だが今大会、セコンドについた永嶋さんが流ちょうな英語で選手に指示を送っている姿があった。「ちゃんと言葉は通じているかどうか、分からない時もあるけど、黙っていてもしょうがないので(どんどん話しています)。ようやく耳は慣れてきているのですが、話す方の瞬発力がまだないですね(笑)」。課題はあるものの、コーチングには支障はないようだ。
■最短でも2016年まで米国選手の指導を続ける!
現役時代、抜群の強さを持って世界を制した永島さん。指導方針は「30年間、レスリングをやってきた中で、よいと思ったことを組み立て直し、考え直して伝えています」と、 “聖子スタイル”を惜しみなく伝授している。
インターバルでテリー・スタイナー監督のアシストをする永島コーチ
契約は1年ずつ。2年後にリオデジャネイロ・オリンピックが控えていることもあり、「自分が指導してきた選手が結果を残すところまで見ていきたい」と、リオ・オリンピックに米国コーチとして臨む覚悟を見せた。
永島さんが女子55kg級の現役選手時代は、吉田沙保里(ALSOK)と激しく日本代表の座を争った。その吉田は、リオどころか、37歳で迎える東京オリンピックを目指すと宣言している。永嶋さんに現役復帰に話をふると、「今は、自分の仕事に集中しています」と指導者の顔をのぞかせた。
今後の目標は「世界選手権や世界ジュニア選手権で、全階級すべての選手に優勝するチャンスがあるので、それをサポートできるように頑張りたいです」―。日本の元世界女王が、米国で指導者としても“世界”を獲るか!?