2014.03.13

【全国少年少女選抜選手権・特集】沖縄のレベルアップのため単身で参加した村田亮審判員(てだこジュニア)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

村田亮審判員

 3月9~10日に東京・青少年総合センターで行われた全国少年少女選抜選手権は、年々参加者が増え続け、今年は43都道府県からの参加があった。選手の参加はなかったものの、はるか沖縄から「てだこジュニア」の村田亮審判員が上京。6日から行われていた審判クリニックに参加したあと、大会をさばいた。

 沖縄出身で、宮崎・都城高へ進んでレスリングに取り組み、南九州大時代の1996年に西日本学生選手権んぼグレコローマン57kg級で優勝。階級区分の変わった翌年は両スタイル58kg級で優勝という実績を持つ。

 卒業して沖縄に戻り、会社員として勤務する一方、30歳までは国体に出場するなど選手として活躍。2007年から屋比久保さんが開設した「てだこジュニア」のコーチとして参画。屋比久保さんが高校の指導に力を入れるため、現在は監督として同クラブを指揮している。

 「沖縄のレスリングのレベルを上げたいからですね。日本協会の審判ライセンスは持っていますけど、キッズのライセンスは持っていませんし」。長距離移動に加え、4日を超える滞在となっても東京まで駆けつけたのは、ひとえに沖縄のレスリング界のためだ。

 県内では年4回の大会があるが、沖縄以外から参加する選手は少なく、全国レベルのレスリングに接する機会は少ない。九州や本州に頻繁に遠征して闘わせれば選手のレベルも上がるだろうが、費用の壁は大きく、そう簡単にはできない。せめて自身が全国大会に審判として参加し、そのレベルを直に接することで沖縄のレベルアップに還元したいと考えている。

■全国大会上位選手のレスリングは、「高校生や大人と変わらない」

 キッズを指導するようになって、最初は「どう教えていいか分からなかった」と言う。自身がキッズ時代にレスリングはやっていなかったため、キッズ・レスリングを勉強することから始まった。さらなる飛躍を目指し、キッズの審判ライセンスの取得を目指した。

「今回、審判として学んだことや見た技術を沖縄の選手に周知させたい」という村田審判員の目に映った全国大会上位選手のレスリングは、「高校生や大人と変わらないレスリングをやっている」こと。今後もできるだけ全国レベルの大会に参加し、キッズ・レスリングを勉強していきたいという。

 キッズの審判で難しいと感じたことは、危険な体勢になった時の止めるタイミング。審判員には、けがをしないために試合を止める義務がある一方、そうしたケースでは攻撃側がポイントを取る体勢になっているのが普通で、早すぎるブレークはクレームにつながる。「判断が難しいですが、けがをさせないことを第一に心がけたいと思います」と言う。

 沖縄県からは、2012年に浦添工業高校が全国高校選抜大会の学校対抗戦で優勝し、個人でも全国王者を何人も輩出。キッズからの一貫強化が実を結んでいる。キッズの強化によって、さらなる発展が望まれるが、村田審判員は「レスリングの体力、バランス、俊敏性などは、どんなスポーツにも生かせます」と話し、たとえ他のスポーツをやることになっても通じるだけの体力づくりを念頭に、「選手を育てていきたい」と結んだ。