2014.03.07

スウェーデン遠征の若手女子チームが帰国

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

スウェーデンに遠征していた若手女子チームが3月6日、成田空港着のスカンジナビア航空で帰国した。「クリッパン女子国際大会」では、カデットで「金8・銀4・銅1」を取る好成績を挙げた一方、シニア(ジュニアを含む)では「銅3個」と壁を感じされられた大会となった。

 成富利弘監督(東京・安部学院高教)は所用のためすでに帰国済み。遠征を最後まで率いた吉村祥子コーチ(エステティックTBC)は「カデットの8階級優勝は、これまでで一番の成績ではないでしょうか。みんな積極果敢に攻め、国内でもいい強化ができていることを感じました」と、次代をになう選手の好成績に満足そう。

 ジュニア世代が参加したシニアの部では優勝がなかったが、山田海南江(東京・安部学院高)がロンドン・オリンピック3位のクラリッサ・チャン(米国)を、古市が2年前の世界選手権2位のドロシー・イーツ(カナダ)を破るなど、要所で光るものを見せてくれた。「相手の調子がどうだったかは分かりませんが、まぐれで勝てる相手ではない。ジュニア世代も今後の可能性を見せてくれました」と評価した。

 合宿はスウェーデン、米国、ドイツ、ポーランド、チュニジア、ラトビア、ハンガリー、ノルウェー、オーストリア、フィンランド、日本の11ヶ国から168選手が参加。カデットの一部の選手はシニアの練習に参加させたりもし、「スパーリングを多くできて外国選手の特性を肌で感じてくれたはずで、内容の濃い練習ができた」と振り返った。

 外国から評価されたのはマットの上での技術や体力だけではなく、礼儀正しさ、相手やスタッフに対するリスペクト(尊敬)などの姿勢。「スウェーデンのコーチ達が驚いていました。この遠征中の指導だけでできるものではない。各所属の先生方の指導の賜物だと思います」と、選手を育てている各チームの指導者のマット以外の部分での指導に感謝した。

 最後に、「世界一になるためには、ここからが大変。もっとやらなければならないことがある」と締めた。

 初参加の洞口幸太コーチ(岐阜・マイスポーツ)は「遠征に慣れている選手が初参加の選手を引っ張ってくれ、チームワークを感じた遠征でした。カデットは(日本選手が勝ち上がるので)セコンドが忙しかったけれど、日本の実力が世界一であることが分かった。女子の指導者として、自分自身の勉強にもなりました」と振り返った。

 大会には審判として参加し、合宿では指導もやった高野謙二審判員(茨城・鹿島学園高教)は「ドクターが同行してくれたことが大きかった。けがをした時に的確な対応をしてくれ、小さなけがを、小さなけがで終わらせてくれた(悪化させなかった)。必要なことですね」と、チームを支えた藤木崇史 医師(自衛隊)に感謝した。

■優勝できなかったが、48kg級での方向性が見えた宮原優(東洋大)

全日本チャンピオン(51kg級)として唯一参加した48kg級の宮原優(東洋大)は、2回戦で昨年の世界選手権3位のアリッサ・ランプ(米国)に敗れて上位入賞ならず。ランプは2012年のワールドカップでやったことのある相手。4-6からラスト1分で6-6に追いつき、ラストポイントで勝っていると思っていたら、ビッグポイントによって負けてしまったという。

相手が、自分が負けていると思ってか猛攻撃してきたそうで、これも勘違いした要因かもしれない。練習してきたことは出せたというが、「悔やまれます。失点が多かった」と言う。

ただ、初の48kg級での試合に収穫は多かった。48kg級の選手は下に入ってくることが分かり、構えを低くして懐に入らせない必要性を感じた一方、体重が軽い分、反応も速いのでフェイントが効くことが分かった。自分のリーチをもっと生かす必要も感じ、48kg級としての闘いに方向性が見いだせた様子。「次につながる闘いはできました」と言う。

 優勝したロンドン・オリンピック2位のマリア・スタドニック(アゼルバイジャン)は「本当に強いですね。うまい、というより、スピードがあって勢いがすごい。今は勝てないかもしれないけど、手が届かない相手ではない。じかに見ることができ、大きな目標になりました」と話した。

 その48kg級で、海外初遠征にして銅メダルを獲得した山田は「緊張し、1試合目を終わって息が上がってしまい、どうしようかと思いました」と、経験したことのない不安に襲われていたという。しかし、周囲の応援を力に変え、銅メダルを取った。

 オリンピック銅メダリストを破ったことは「夢かな、と思いました。あとでビデオを見て、勝ったんだ、って実感しました」と言う。「相手の強さに関係なく自分のレスリングを出すことが目標でしたので、自信になりました」と話し、今後の飛躍を誓った。


 ■カデット49kg級優勝、通算3度目の優勝・加賀田葵夏(東京・文化学院大学杉並高)「これま何度か海外遠征に参加させてもらい、それが役立ちました。ただ、日本選手とやった2試合があまりいい内容ではなかったです。手の内が分かっているので、守りに入ってしまい、攻めることができませんでした。ジュニアクイーンズカップでも同じ階級に出てくる選手ですので、しっかり直していきたい。今年は、去年いい成績を残せなかったインターハイで勝ち、世界カデット選手権でも優勝したい」

 ■カデット52kg級優勝、通算3連覇・向田真優(JOCエリートアカデミー/東京・安部学院高)「失点はありましたが、スタンドでもグラウンドでも、自分のレスリングはできたと思います。全日本選手権の(ラスト1秒での逆転負けの)悔しさがあったから、やってくることができました。ジュニアクイーンズカップの前に新ルールを体験できてよかったです。クイーンズカップで優勝し、アジア・カデット選手権で勝ってユース・オリンピックに出たい。オリンピックという名前がついているので、普通の大会ではないと思います。出場し、優勝したい」