2014.03.06

メダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業報告(3)…9・20~23第1回U-12MPAキャンプ

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

JWFメダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業
プロジェクトマネジャー  清水聖志人


2011年に制定した「スポーツ基本法」は、我が国におけるスポーツの施策策定および実施を国が責任を持って行うことを明確に示した。それを受けて2013年に策定された「スポーツ基本計画」に則り、文部科学省は新たな事業を実施している。その中の一つが、独立行政法人日本スポーツ振興センターが委託を受け、本協会が受託している「メダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業」である。本事業は、発掘されたアスリートが代表チームに上がっていく道筋(パフォーマンスパスウェイ)を構築するとともに、各強化段階にあるアスリートを次段階へと引き上げるための強化・育成活動を通してシステムを構築する事業である。

 9月20~23日の期間、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターにおいてメダルポテンシャルアスリート育成システム構築事業(以下、MPA)の一環にて、国内育成プログラムU-12MPAキャンプを実施した。今回のキャンプでは日本レスリング界の将来を担うU-12世代(小学校6年生以下)の有望選手45名(男子27名:女子18名)が参加した。

 若手世代の強化としては、2001年から大学生や高校生の選抜選手によるNTS(以下、ナショナル・トレーニング・システム)が行われており、毎年ブロック研修会や中央研修会が実施されている。しかし、強豪国における国際競技力向上戦略の動向を概観すると、より早期からのタレント発掘・育成・強化を戦略的に推進していることが見て取れる。その様な背景を踏まえ、本事業においては、U-12からU-15、カデット(U-17)、ジュニア(U-20)を対象とし、高品質な機会を提供し、既存の強化システムであるNTSやナショナルチームへと繋げる道筋(パフォーマンスパスウェイ)を構築する。

一貫指導プログログラムとして、U-12世代を対象として招集したのは初めてであり、初日のプログラム(キックオフミーティング、マット練習、教育プロプログラム)には、保護者や各所属のコーチも参加した。

 レスリングのMPA事業は「インテリジェントレスラーの育成」をコンセプトとし、全国のU-12世代、U-15世代、カデット世代、ジュニア世代から優秀なタレントを発掘し、国内育成プログラム(MPAキャンプ)によって育成を行う。MPAキャンプに参加した中で、特に優秀なタレントには海外育成拠点での実践機会を提供する。また、高度レベルの競技活動を通して得た経験や知識を基に、日本のリーダーとなれるアスリートの育成を目指すため、「教育プログラム」に注力しているのが特徴である。

 マットにおけるトレーニングにおいては、ナショナルチームも指導するコーチが基本技術を徹底して指導した。コーチは「これから日本を代表することの責任を持ち、生活面から自覚を持った行動をとってほしい。また、この年代で基本技術を徹底して行うことが重要、今回習った技術を、所属で何度も反復してほしい」と要望した。

なお、これまでの試合実績偏重のタレント選抜から、客観的な指標を用いてタレント発掘を行うため、形態測定、フィットネス測定、レスリング適正テストなどを実施した。キャンプ最終日には、レスリングMPAの松永リサーチャーより、測定データのフィードバックを行い、ナショナルチームやジュニア代表データとの比較を基にフィットネスレベル向上に向けたカウンセリングを実施した。

 ロンドン五輪においてフリースタイル60kg級の、Asgarov, Togrul (アゼルバイジャン)は、19歳で金メダルを獲得した。同選手は、この2年前に世界選手権のファイナルに進出している。U-12世代は、十分に2020年東京五輪を狙うことが可能であり、MPAによって、各年代に応じた適切な機会を提供することで、現在のU-12年代からジュニア世代までの国内競争を激化させることが2020東京五輪そしてその後の育成、強化、普及につながると考えられる。

 今後は、客観的指標を用いて種目転向プログラム(グレコローマンのスペシャリスト育成)や、海外育成拠点において、中・長期留学で強化・育成する展開も実施する予定である。

 本事業は、オリンピック競技大会において永続的にメダルを獲得できる強化・育成システムの構築を目指すものであり、文部科学省及び独立行政法人日本スポーツ振興センターより事業の成果報告が求められる。このことから、本協会に関わる全ての関係者が方向性を共有し、事業の推進に努める必要がある。


形態測定(InBody)

適正テスト(キャットバンドレスリング)

フィットネス測定 1500m走

教育プログラム(田南部 力コーチ)

教育プログラム(小原 日登美 氏)

練習の様子①(スパーリング)

練習の様子②(スパーリング)

練習の様子③(技術練習)

練習の様子④(技術練習)

形態・フィットネスデータの測定