2014.03.05

男子フリースタイルの全日本チームが合宿スタート

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

練習開始前に選手を激励する栄和人・強化委員長

男子フリースタイルの全日本チームが3月4日、今月15~16日のワールドカップ(米国・ロサンゼルス)と来月のアジア選手権へ向け、東京・味の素トレーニングセンターで合宿をスタートした。

 最初に、日本オリンピック委員会(JOC)の強化担当者の会議で状況していた栄和人・強化委員長があいさつ。「JOCの会議では、リオデジャネイロまで米国経由がいいか、ヨーロッパ経由がいいか、現地の治安、練習場が確保できるかなどの話が出た」と、ソチ冬季オリンピックが終わり、すでにリオデジャネイロ・オリンピックへ向けての体制になっていることを説明。「和田委員長のもとで、しかり強化してほしい」と望んだ。

 男子フリースタイルの和田貴広・強化委員長(国士舘大教)は「あっという間にオリンピックの中間年。時間は少ない。ロシア、イラン、トルコへ遠征した選手は、そこで学んだ課題にしっかり取り組むように。外国選手の試合DVDを穴があくほど見て研究することも大事」と、自覚をうながした。

 世界の10強で争われるワールドカップは、キューバの辞退によって繰り上げで出場することになった。「まだ3分2ピリオドのルールに慣れていない選手もいる。無条件で外国選手と5試合できるワールドカップは、新ルールに取り組むいい機会」と話し、試合をこなす中から新ルールへの対応を求めた。

和田貴広・フリースタイル強化委員長の指導

田南部力コーチ(警視庁)は「これからワールドカップ、アジア選手権、全日本選抜選手権と続き、学生は学生の大会もある。選手をやっている限り、オフはないものと思ってほしい。逃げてはいけない、出られる試合はすべて出て、チャンスをものにしてほしい」と激励した。

■世界8位の山口剛(ブシロード)が戦線離脱

 残念なニュースもある。昨年の世界選手権の96kg級で8位に入賞し、重量級を支えてくれる期待のあった山口剛(ブシロード)が、グルジアへの単独の武者修行の最中に右ひざを負傷。長期間の戦線離脱を余儀なくされた。

 和田委員長は「ロンドン・オリンピックで選手が入れ替わり、山口は結果を出してくれて期待していた若手選手だけに残念」と話したが、代わってワールドカップに出場する山本康稀(日大)も「同じく期待の若手選手だ。与えられたチャンスを生かし、頑張ってほしい」と望んだ。

 大舞台出場のチャンスを得た山本は「いいチャンスをもらいました。強豪国の選手を相手に自分から攻め、負けないのが一番だけど、負けても次につながる内容の試合をしたい」と気合十分。「人の不幸を喜ぶことはできませんが、山口さんのいない間に頑張って、世界選手権にも出場したい」と、一気の飛躍を目指す。

田南部力コーチの指導

これまでシニアの国際大会としては、デーブ・シュルツ国際大会(米国)に出場したことがあるが、その大会で闘った選手は「日本の学生選手と全然違い、つかまったら動けなくなる」と、その強さは骨身に染みている。ワールドカップで闘う選手はもっとレベルが上であろうが、「つかまれても力を入れられないような練習をしてきたので、その成果を出したい」と話した。

 合宿には、昨年の世界選手権(60kg級)で 左脚を負傷し、戦列を離れていた前田翔吾(クリナップ)が復帰参加した。「当初は(戦線離脱が)1年とも言われました。半年かからずに戻ってくることができました。まだ100パーセントの完治ではありませんが、レスリングの動きができるまでに回復しました」とのことで、6月の全日本選抜選手権には出場の予定。「試合で勝ってこそ復帰と言えると思います。気をゆるめずにやっていきたい」と言う。

 治療期間中に階級区分が変更されて60kg級がなくなり、若手選手も出てきた。「ベッドの上でいろいろ考えましたが、世界選手権での悔しさが支えてくれました。数kgの階級変更くらいであきらめられません。『強い気持ちがあれば大丈夫』という思いが、けがを早く治してくれたと思います」と、前向きの気持ちを忘れなかったことを強調した。

 新しい階級区分では、非オリンピック階級の61kg級ではなく、最初からオリンピック階級の65kg級を選んだ。「(体重は)70kgくらいまで増えた。あと2、3kgはほしいけれど、いきなり増えて動けなくなっても意味がないので、動きを見ながら増やしていきたい」と、今後の展望を話した。

 合宿はワールドカップ・チームが渡米する12日まで続けられる。


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