※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
45年ぶりの全国一を目指す舘林高校の選手たち。後列右から2人目がオリンピック2連覇の小幡洋次郎氏
学校対抗戦は2年連続の2位だが、昨年の個人戦では3位以内はいなかった。明らかに個々の力がついた。木村主将は「去年の団体戦はたまたま勝ってしまったという感じ。今年は優勝する予定でいたので、霞ヶ浦に負けてすごく悔しかった。個人戦で(悔しさを)晴らそうとした」と、個人戦での躍進の理由を述べた。
特に74kg級の齋藤は、学校対抗戦の決勝で敗れた霞ヶ浦の奥田海人を準々決勝でリベンジしての優勝。「きのうの夜、決勝のビデオを見て分析しました」と練った対策がピタリとはまった。決勝で対戦した同門の田口には、「県予選で負けていたので、今回も負けるかと思った」と言うが、こちらも見事にリベンジした。チームではただ一人、栃木県から電車を2度乗り継ぎ片道1時間半かけて高校に通う努力家。その努力がついに花開いた。 同門対決に勝った74kg級の齋藤隼佑
学校対抗戦は、霞ヶ浦相手に先に王手をかけるなどあと一歩だった。木村主将は「4番手の66kg級までで3-1とリードするのは予想通りでした。84kg級でも勝つ予定でいたのですが…」と敗戦の弁。ここ最近は霞ヶ浦が出げいこに来ることが多くなり、場数を踏んだことで、「名前負けはしなかったと思います」と、選手たちは、気持ちの面で軽中量級で対等に闘えたことを強調する一方で、チームの指揮を執った針谷監督は、「霞ヶ浦とは練習量、体力、技術の差というより、(霞ヶ浦の選手には)負けられないという気迫がありました」と、全国優勝の常連校の気迫に負けたことを認めた。
その克服のため、すでに手は打っている。針谷監督は「部員全体に全国優勝を意識させるために、学校に『全国優勝』というプラカードを作ってもらいました。練習する度に見ることになりますので、必然的に意識するようになった」と、効果が出てきているようだ。
■チームの応援隊長は、オリンピック2連覇の小幡洋次郎氏
選手の意識が高くなったのは、“プラカード作戦”もさることながら、2012年ロンドン・オリンピックで銅メダルを獲得した松本隆太郎選手(現群馬ヤクルト販売)らOBの活躍が大きい。針谷監督は「最大の要因は、毎日必ず練習に顔を出して指導をしてくださる、小幡(旧姓上武)洋次郎さんの存在でしょう。72歳であのエネルギーはすごいです」と、日本人男子で唯一オリンピックを連覇(1964年東京・1968年メキシコ)した大先輩に感謝した。 60kg級で2位に入った佐々木拓海
小幡さんが練習に顔を出すのは、以前からのことだが、昨年9月に2020年東京オリンピックが決まったことで、さらに精を出して指導に取り組んでいるという。針谷監督は「小幡さんは『東京オリンピックまでは生きていないとね』とおっしゃっていて、以前より健康管理にも気を使うようになりました。明確な目標を持って、毎日エネルギッシュに指導してくださっています。また、それ以上に、『死ぬまでに、もう一度、館林の日本一が見たいよ』とも言われますので、まずは今年、“日本一”のほうを実現できるようにしたい」と、高校の頂点を目指すことを宣言した。
木村主将も自分たちの代での日本一を本気で目指している。「インターハイでぜひ勝ってみたい」―。1969年のインターハイ以来、45年ぶり4度目の古豪復活は果たされるか―。