2014.01.13

【全日本マスターズ選手権・特集】明暗を分けた二世選手の父…森下敏清さん(霞ヶ浦アンジュスポーツ)佐々木悟さん(フリー)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

第13回全日本マスターズ選手権では、昨年末の天皇杯全日本選手権で実現した白井正良・勝太の親子対決に刺激されてか、2人の二世選手の父が奮戦。46~50歳63kg級に出場した森下敏清さん(茨城・霞ヶ浦アンジュスポーツ=日体大OB)は3試合に勝って優勝。61~65歳69kg級に出場した佐々木悟さん(東京・フリー=拓大OB)は決勝で無念の負傷棄権となり、明暗を分けた。

■3試合を無失点で勝ち抜く…森下敏清さん

 日体大OBの森下さんは、男子フリースタイル55kg級全日本王者の森下史崇選手(日体大)の父。親子で全国中学生選手権(ともに2連覇)、全国高校選抜大会、インターハイ、国体少年、全日本学生選手権(ともに2連覇)、全日本大学選手権で優勝している親子鷹。セコンドには史崇選手がつき優勝を支えた。

 昨年もエントリーしたが、出場は1人だけで特別試合をやっただけ。今年は3試合もあり、「きつかったですね。練習してきましたが、3試合やる体力はないですよ」と苦笑いだが、優勝の瞬間はガッツポーズを見せるなど久しぶりの優勝の味を十分に堪能。「無失点でしたし、よかったですね」と最後はにっこり。1日に3試合やったのは、記憶では1986年の山梨国体以来だという。

出場を決めたのは、レフェリーとしてこの大会を裁いているうちに、「年配の人でも一生懸命やっている。自分もできるかな、という気持ちになりまして」という理由から。親子対決の実現や史崇選手の活躍に刺激されたのがメーンの理由ではないようだ。それでも、大会までに史崇選手の指導をしっかり受けたとのことで、親子タッグでの勝利だ。

 日体大の後輩でもある西口茂樹・男子グレコローマン強化委員長(拓大教)らから、「来年は夫婦での出場ですか?」と冷やかされると、そばにいた妻・真須美さんをチラリと見て、「本人次第です」-。

 さらに、4月から史崇選手が社会人になることで、「全日本社会選手権では、史上初の父・母・子供のそろい踏みもできますよ」との声に、「いや~!」と苦笑い。体重が違うので親子対決は難しそうだが、親子3人出場は可能性がありそう。

■5-0とリードしながら、無念の負傷棄権

拓大OBの佐々木悟さんは、個人での成績は新人選手権2位が最高だったが、昭和40年代中盤の拓大の主力として活躍。東日本学生リーグ戦2位というチームのメンバーだった。今大会では3者リーグの初戦を勝ち、実質的な決勝となった梅田修二さん(大阪・近大付高教)との一戦も5-0とリードする好調。

 しかし、この時のローリングで右脚に肉離れのような症状に襲われ、無念の棄権。「恥ずかしい。練習も満足にしていないのだから、けがするのは当りまえですね」と照れ笑いを浮かべた。

 セコンドは拓大でならした長男・遼さんと次男の晋さん。遼さんは2009年の全日本大学グレコローマン選手権60kg級のチャンピオン。晋さんも東日本学生新人選手権で2階級制覇を達成。2012年全日本学生選手権グレコローマン60kg級2位などの成績を残して拓大の躍進に貢献した。

悟さんは2人の息子が卒業したあとも大会の度に会場を訪れて母校の応援を続け、世田谷区千歳烏山で経営している居酒屋「百万石」は、拓大の祝勝会や慰労会の常店だ。

 「ここ5、6年マットに上がったことがない」というにもかかわらず試合出場を決めたのは、知人が出場した昨年の大会を観戦し、「出てみたい」と思ったことに始まる。昨年10月に正式に決意して練習を始めたが、首筋を痛めて病院通い。医師からは「やめた方がいい」とアドバイスされたそうだが、「大丈夫だ、と思って出場した」と言う。

 けがを除けば、久しぶりのマットは「楽しかった」と言うが、「やっぱり厳しいスポーツですね」と一言。5点をリードしたにもかかわらず優勝につなげられなかったが、「まあ、できただけでも幸せです」とのことで、「できるかな、という気はしました。来年も機会があれば出てみたいです」と、来年のリベンジを宣言。