※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫) 西日本学生界の紅一点審判の大川彩美さん
小学校1年生の時からエンジョイ・クラブでレスリングに親しみ、大阪・堺女子高校(現香ヶ丘リベルテ高校)へ進んでも続けた。在学中の最高の成績は2010年のジュニアクイーンズカップの3位。「レスリングが好きだから」と大学へ進んでもレスリングを続ける道を選び、地元大阪の関大へ進んだ。
当時の関大は部員の不祥事のため活動停止中で、1年生の時は練習がまったくできない状況。2年生からやっとマットの上で汗を流せるようになった。ブランクは大きく、2年生の時は成績残せなかったが、今年は8月の全日本学生選手権で山梨学院大と早大の選手を破って3位へ。やっとエンジンがかかってきた。 試合をさばく大川さん
昨年初めにC級ライセンスを取り、今回までにリーグ戦など3大会をさばいた。
「自分の判断で試合が動く」と、試合では審判がいかに重要な役割であるかを感じるそうで、特に団体戦は両チームが個人戦以上に熱くなるため、「怖く感じることがあります」。それでも、リーグ戦が応援だけで終わらず、エネルギーを熱く燃やす舞台となってやりがいを感じているようだ。
■将来もレスリングに携わっていくのが目標
全国大会でのデビューやA級ライセンス、さらに国際審判の道は、現段階では「考えていない」。しかし、将来は教員が目標でレスリングに携わっていきたいとのことなので、審判を続ける可能性は十分。「そういう形でレスリングに残るのもありかな、とは思います」と言う。
もちろん、今は選手としてもエネルギーを燃やす時だ。55kg級で闘っているが、吉田沙保里選手(ALSOK)とは闘ったことはない。「機会があれば、ぜひ一度は」と、世界最強のチャンピオンとの対戦を待ち望む気持ちも。 8月の全日本学生選手権では3位入賞と選手でも頑張る大川さん(左端)
福田理事長はその点を指摘されると、「まあ、その…」と歯切れが悪かったが、「今後はきちんと育てます」ときっぱり。
国際オリンピック委員会(IOC)がレスリングに“強烈なイエローカード”を突きつけたのは、レスリング界には大きな男女格差が存在し、是正を求めるIOCのリクエストに対して国際レスリング連盟(FILA)の動きが鈍すぎたことも一因だった。
階級を調整し、女性委員会を新設し、女性副会長を擁立するなど、やっと是正に動きだした。日本も歩調を合わせなければならない。審判員育成に定評のある西日本学生連盟だけに、女性審判の世界でも存在をアピールしてほしいものだ。