※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 現役続行を決め、全国社会人オープン選手権で優勝した藤村義(自衛隊)
藤村はロンドン・オリンピックのあと全日本選手権や全日本選抜選手権にはエントリーせず、進退が注目されていた。約1年の休養を経て藤村が出した答えは、「現役続行」だった。
あこがれのオリンピックには出場できたが、結果は初戦敗退。満足感より、悔しさの方が大きかった。年齢も30歳を超え、現役引退して指導者に転向するのも選択肢の一つだった。「(自衛隊の)幹部になるための教育を受けるのも一つの道だったが、この年齢で現役の戦列から外れたら引退だと思った。いろいろ考えたけど、何も見えてこなかった」と、そこには現役にこだわった自分がいた。
もともと10kg以上の減量を伴っていたこともあり、正式に階級アップを決意。12月の全日本選手権に出場するために、出場資格のかかった今大会での優勝を狙っていた。
■新階級、新ルール下でも実力を発揮できるか
この大会は、現役トップ選手より、ライフワークとしてレスリングを続けている一般社会人のエントリーが多いため、グレコローマン74kg級のトーナメントで藤村の名前はひときわオーラを放っていた。周囲が「藤村が優勝する」と口をそろえる中、藤村本人だけが、今大会に“進退”をかけて闘っていた。 決勝で闘う藤村(青)
だが試合では、焦って技を展開した清水とは対照的に、落ち着いて清水の動きに反応した藤村が、ローリングや投げを決めて最後はフォール勝ち。体力はオリンピック時に戻っていないが、「戦略でカバーできた」と勝ちにこだわった試合はできた。
体力面もさながら、新ルールも藤村の課題だ。不動の王者を誇った藤村だが、それは、前ルールで66kg級という条件のもと。スタミナやスタンドの攻防がかぎとなる新ルールで、さらに、元世界5位の金久保武大(ALSOK)がいる74kg級で、どれだけやれるかは未知数だ。
それでも藤村は力強く宣言した。「現役は続けます。今回、清水選手に勝ったことで、レスリングに対するモチベーションが戻ってきました。74kg級でチャンピオンを目指します」。2年ぶりとなる全日本選手権で藤村は復活優勝を果たせるか-。