※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
日韓のナショナルチームが集合
韓国は現在、グレコローマンが世界のトップレベル。今回のメンバーには66kg級のリュ・ハンスと74kg級のキム・ヒョンウの2人の世界チャンピオン(キムはロンドン・オリンピック66kg級王者)のほか、2004年アテネ・オリンピックで優勝し2008年北京大会とロンドン大会にも出場した60kg級のユン・ジヒュン、2010年と今年の世界選手権55kg級で2位になったチョイ・ギュジンら世界ランカーがずらり(この日、リュ・ハンスは体調不良で休養)。
高田強化本部長(山梨学院大教)は「チームに世界王者がいることで、世界一になるにはどれだけの強さが必要か肌で分かる。それが韓国の強さだ」と分析。選手に「世界チャンピオン、オリンピック・チャンピオン相手に積極的に胸を借りるように」と指示する一方、全日本選手権が近いこともあり、けがには十分に注意するよう指導した。
グレコローマンの西口茂樹強化委員長(拓大教)は、韓国の強さを「自信ですよ。自信持っています」ときっぱり。技量では日本選手と変わらなくとも、自信たっぷりに練習しているという。9月の世界選手権(ハンガリー)で2階級を制したことで、チーム全体が自信をつけている面もあるが、「勝ったから自信がついた、ではなく、自信を持って世界選手権に臨んだ、という方が正しい」と言う。
その自信の源は「猛練習でしょう。極限を超えている練習をしているという自信ですね」と推測する。手の内を隠すかと思ったそうだが、そんな素振りはまったくなく、「どうぞ見てください。真似できるなら、どうぞ真似してください、と言わんばかりの自信を見せている」と、完全な“横綱相撲”。
安漢奉監督(1992年バルセロナ・オリンピック金メダリスト)から「日本にもいい選手はいる。オレ達くらい練習すれば勝てるよ」と言われたそうで、日本チームも厳しい練習によって「追いつきたい」と話した。
6面マットで熱の入った練習が展開された
オリンピック・チャンピオンのキム・ヒョンウと練習した全日本大学グレコローマン選手権74kg級王者の阪部創(神奈川大)は「思い切っていったけど、実力の差はあった。相手のペースでバランスを崩されてしまう。自分が行っても、(そこに)相手がいない。かわす技術もすごい」と話す一方、「とにかく思い切ってぶつかりたい。この1週間で1段階上がると思う」とやる気を見せる。
同2位の中村隆春(日体大)は「最初のうちは勝負できましたが、最後になるとばててしまって、たたみかけられる。これでは、試合で負けてしまうということ。最後に強さを発揮できるのが、世界チャンピオンになった理由だと思いました」と言う。
パワーの差は感じなかったそうだが、組み手の技術がすごく、「ばてない技術と言いますか、力を抜きながら差して前へ出る技術がすごい。この技術がうまい分、ばてないのだと思います」と話し、力を抜く技術の必要性も感じたようだ。
55kg級で2度世界2位になっているチョイ・ギュジンと闘った国体王者の尾形翼(ALSOK)は「普通の選手なら、止まるだろう、攻撃してこないだろう、という体勢からも攻撃してくる。世界のトップ選手は違うと感じました。力と体力があり、攻撃の手が休むことない。チャンスと思ったらたたみかけてくる。一瞬のすきでもつくったらダメだな、と思いました」と振り返る。
「まだ本気を出していない。様子見の面があった」とも感じるそうで、この先、さらに厳しい練習になることを予想しているが、「いい経験です。いいところをどんどん盗んでいきたい」と話した。
フリースタイルは全体的には日本の方が上だが、強い選手もいて、日本選手同士では味わえない緊張感のもとで汗を流した。96kg級世界選手権8位の山口剛(ブシロード)は、アジア選手権優勝のキム・ヤエガンと「互角に闘えました。自信になります」と話し、実りある合宿をこなせそうだ。