※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) フリースタイル60㎏級優勝の高安直人(高安組)
所属は父が経営している建設業。実際に現場に出て、フルタイムで仕事をしている。自宅は千葉県だが、仕事で都内にくることもしばしば。強豪・日体大で学生チャンピオンになり、満足感からか、「もう、レスリングはいいかな」と、翌年の世界学生選手権の出場資格を持ちながら辞退。仕事に没頭する毎日を送っていた。
だが、ある日、自分の気持ちに気づいた。「辞めると、やりたくなるんですよね。体を動かしたくなった」と、できる範囲でレスリングをやりだした。普段の練習は自宅付近での筋トレや走り込み。7月の全日本社会人選手権など試合を目標に掲げて、その前には1週間や2週間ほどまとまった休みをもらって高校レスリング界の雄、茨城・霞ヶ浦高校で泊まり込みで合宿を行った。
■職業プロの選手に勝てた要因は、霞ヶ浦だった
「自宅から、霞ヶ浦まで車で1時間くらい」とアクセスは良好。高安は同校OBではないが、「どうせやるなら有名なところで続けたいと思った」と、大澤友博監督に頼み込んで練習に参加。朝練習からマット練習まで、基本的に高校生と同じメニューをこなした。 決勝で勝ってガッツポーズ!
霞ヶ浦高校に通ったことで大きかったのは、新ルールでの対応だ。相手は高校生とはいえ、基本的にシニアと同じルールで試合は行われている。高安は高校でレスリング始めてから、今までピリオド制しか経験していなかった。
全日本社会人選手権に向けて2週間の合宿を行った時は、相手の高校生もインターハイで大事な時期。高校生に技術を教え、スパーリングで胸を貸す代わりに、高安は必死で新ルールの感覚をつかんだ。
高安の存在は霞ヶ浦高校にとっても渡りに船だったようだ。「8月のビーチレスリングの時に、大澤監督から『おまえが来てくれたから、インターハイで優勝できたよ』と言っていただきました。自分が役に立ててうれしいですね」。今後も、仕事と自宅回りでの基礎トレーニング、霞ヶ浦での練習というライフスタイルをやっていく予定だ。
次の目標は12月の全日本選手権であり、今後の目標は来年の社会人選手権で優勝し、秋の米国遠征に出場すること-。元インカレ王者の快進撃はどこまで続くか!?