2013.11.24

【東日本学生秋季新人戦・特集】2年連続高校四冠王者が実力発揮…両スタイル96kg級・与那覇竜太(専大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 沖縄・浦添工高時代に2年連続で高校四冠(全国高校選抜大会、インターハイ、全国高校生グレコローマン選手権、国体)を制覇した与那覇竜太(専大)が、東日本学生秋季新人選手権の両スタイル96kg級を制覇。本領を発揮し、「今年の締めは(12月の)全日本選手権ですけど、学生の最後の大会で両スタイルで優勝できたのは自信になります」と話し、1ヶ月後の天王山に勢いをつけて迎えられそう。

 「大学に進んでから攻撃のスタイルを変えましたが、うまくやろうという気持ちが強すぎ、内閣(全日本大学選手権)では自分の構えが浮いていたのが反省点でした。その課題に取り組み、1週間で結果を出すことができ、大きな収穫です」と、技術面の自信もついたようだが、実は薄氷を踏むような両スタイル優勝だった。

■薄氷を踏む思いでの優勝だったグレコローマン

 結果だけを見れば、両スタイル8試合のうち7試合がテクニカルフォール勝ちで、残る1試合はレフェリーの明らかなミスで試合が中断して混乱し、そのため6分間闘うことになったもの。スコアは「8-1」と、7点差はつけた判定勝ちだった。

 しかし、最終日に行われたグレコローマンの決勝、鈴木勝一(東洋大)戦では、一時0-6に追い込まれ絶体絶命のピンチに陥った。0-0で試合が進み、先にコーションを取られたのは与那覇。パーテールポジションの防御となり、相手のローリングを守った。ここで体のずらし方がまずかったのだろう、相手のクラッチが腰骨にかかってしまい、マット上をゴロゴロと3回転。

 「先日の内閣(全日本大学選手権)でも同じように回されまして、パニックを起こしかけたんです」とのこと。かろうじて持ち直し、こらえてテクニカルフォール負けを避けた時に第1ピリオド終了のホイッスル。腰は決まったままだったので、「時間でなかったら、もう一度回されて試合が終わった可能性はありますね」と振り返り、体の一部を完全に極められた時の恐怖を感じたようだ。

 6点ビハインドの“王手”をかけられたものの、スタンドからの再スタートとなれば、地力十分の与那覇に勝機は出てくる。第2ピリオド、コーションを相手に与えてグラウンドで攻め、まず相手が“オープン”を拒否し、技術回避コーションで2点を獲得(注=脇をしっかり締めたままにするなど、防御のみを目的として体の一部を固めるのはコーションの対象となる)。

 もう一度攻め、今度はがっちりと胴をとらえると、先ほどのお返しとばかりにローリングを6回転。14-6としてテクニカルフォールを決めた。「6点負けていたので、やるしかなかったですよ」と、怒とのう攻撃を振り返った。

 スタンド戦では、絶対に自分が優勢だったと思っていた。先にコーションを取られて防御を強いられることになり、「あれ? と思った」ことも、ペースを崩した要因だったようだ。「自分の方が優勢だ、先にグラウンドの攻撃だ、と思っていました」と、ちょっぴり油断があったことは確かで、課題となる経験だったかもしれない。

■高谷大地(拓大)らの活躍が刺激に

 高校3年生の国体が終わったあと、痛めていた左ひざを手術し、半年間のブランクがあった。4月末のJOC杯の時は、出られる状態だったが大事をとり、6月の春季新人選手権から大学生としての活動が始まった。

 伸び盛りの時期に半年間のブランクは大きいかもしれないが、「納得する状態にまで回復してから出るつもりでしたので、出遅れたという気持ちはないです。最後は結果も出せましたし、いい1年目だったと思います」と学生の最初の年を振り返る一方、同期生の活躍には刺激されるものがあった。

 全日本選抜選手権で高谷大地(拓大)が優勝。全日本学生選手権では園田新(拓大)が1年生王者に輝き、伊藤和真(専大)が2位。1年生で学生王者か大学王者に輝いても不思議でない実績を持っている与那覇だけに、彼らの活躍がちょっぴりうらやましそう。

 それでも、「焦りはないです。むしろ、1年生でもできるんだな、オレもやってやろう、って気持ちにさせてくれましたよ」。この気持ちは、全日本選手権へ向けて大きなエネルギーになりそうだ。

 全日本選手権はフリースタイル84kg級にエントリーする予定。「強い人とは練習か試合でやっています。まだあのレベルではないと思っていましたが、(高谷)大地がやったし、優勝目指して頑張りたい。佐藤(満)コーチからは、『優勝にからませてやるぞ!』と声をかけてもらっています。信じてやっていきたい」と気を引き締めた。