2013.11.13

【全日本大学選手権・特集】技の幅が広がって圧勝優勝!…120kg級・オレッグ・ボルチン(山梨学院大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=樋口郁夫)

120kg級優勝のオレッグ・ボルチン(山梨学院大)

 全日本大学選手権の120kg級は、8月の全日本学生選手権を制したカザフスタンからの留学生、オレッグ・ボルチン(山梨学院大)が圧勝優勝。同大学に2006~09年に在籍したロシアからの留学生、ボリス・ムジコフが達成できなかった1年生大学王者に輝いた。

 決勝は前川勝利(早大)の粘りに攻めあぐみながら、最後は正面タックルから持ち上げてマットに落とし、フォールするという豪快な勝利。パワーの違いを見せつけた。パワーだけではない。今春の来日時は「正面タックルとローリングだけ」と言われていたが、この日はアンクルホールドを仕掛けるなど攻撃の幅が広がったことを証明。

 ボルチンは「グッド、グッド」-。片言の日本語はかなり覚えつつあるそうだが、まだ喜びの言葉がすんなり出てくるほどではない。英語の「コンフィデント(自信)?」という問いには、「スパーリング、いいね」と答え、自信を持てる練習を積んできたようだ。

 小幡邦彦コーチは「片足タックルも練習していますが、まだ試合では出ませんね。硬くなってしまったようです」と残念そう。だが、“正面タックルしかない”のと、“多くの技を練習しているが、試合ではまだ正面タックルしか出てこない”というのは大きな違いがある。

決勝でアンクルホールドを仕掛けるボルチン

 先月、全日本大学グレコローマン選手権に出場したのは、グレコローマンの技を覚えてフリースタイルに生かすための経験という意味もあったようだ。パワー一辺倒の闘いから、かなり進歩しているのは間違いない。

 今年は日本の大会で無敵だったほか、アジア・ジュニア選手権(タイ)3位、世界ジュニア選手権(ブルガリア)10位と国際舞台を経験した。今月20日すぎにはカザフスタンに帰国し、カザフスタン選手権に出場するという。ここで優勝すれば、カザフスタン・チームの海外遠征に参加できたり、来年の世界選手権出場も見て見えてくるという。

 小幡コーチは「オリンピックに出てほしいです」と飛躍を期待し、「そのためには、もっと多くの技を身につけてほしい」と、さらなる技術マスターを注文する。

 今夏の世界カデット選手権(セルビア)で、ハンガリーへ留学している佐々木アーセンが優勝した時、ハンガリー・チームからも熱烈な祝福を受けた。同じ目標に向かって汗を流す者同士に国境はない。また、ボルチンの飛躍は日本レスリング界にも還元されるはず。今後の活躍が期待される。