2013.11.12

【全日本大学選手権・特集】ラストシーズンを学生二冠王者で締める!…55kg級・森下史崇(日体大) 

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子)

55kg級優勝の森下史崇(日体大)

 宿敵をタックルで撃破! 全日本大学選手権55kg級は、全日本学生王者(インカレ)の森下史崇(日体大)が決勝で西山凌大(拓大)を1分39秒、8-0のテクニカルフォール勝ちをおさめ、大会初優勝を飾って学生最後の大会をきっちり締めた。

 森下は「優勝してホッとしました。内閣(全日本大学選手権)は優勝してなかったので、獲らなければいけないと思っていた。大学最後なのでしっかり締めくくろうと思っていた」と優勝への想いを口にした。

■今季負け越しているライバルと2回戦で激突

 大会前日の計量時に、国際レスリング連盟のルール通りにシードなしの抽選を行う今大会は、日体大、山梨学院大、早大などが多くの階級で同じブロックに固まるなど激戦トーナメントになることが多かった。55kg級もそうで、森下は2回戦で今年5月の東日本学生リーグ戦と6月の全日本選抜選手権で敗れている高橋侑希(山梨学院大)と激突した。

 8月の全日本学生選手権でも闘っているので(森下の勝ち)、今年4度目の対戦。高校3年生の時から5年間、同じ階級で闘ってきた森下と高橋。1シーズンで2敗し、負け越されたのは初めてのことだった。前に前にと先手を取って攻めているのは常に森下だが、無理に攻めたところを返されたりして失点するというのが負けパターンだった。

 日体大の湯元健一コーチは「森下は能力がある選手。その能力を発揮させるため、つきっきりでスパーリングをしてきた」と話し、体を張って森下を鍛えてきた。森下の長所は手数や技の多さだが、技を出して体勢を崩したところを高橋につけ入られていた。同コーチは「高橋にやられた時は、高橋(の力量)が上回っていたのではなく、森下がミスをしたから」と分析し、徹底的に森下の構えにこだわった。森下も「自分の構えを崩さないように、気を付けて試合をした」と振り返った。

 それが功を奏したのだろう。今回の対戦では常に先手を取ってテークダウンを奪い、同点に追いつかれても、終盤に片足タックルでバックポイントを奪ってダメ押しの2点をもぎ取った。

 森下は「インカレのときもラスト数秒で逆転しましたし、自分のレスリングを崩さなければ勝てると思っていた」と自信をのぞかせた。これで高橋との今季の成績は2勝2敗と五分。全日本選手権で再度対戦し、今シーズン3勝2敗と勝ち越したいところだ。

■1ヶ月に1度のペースで試合をした今シーズン

 今シーズン、森下はほぼ1ヶ月に1度のペースで公式試合に出場した。全日本王者となったことで、今年の冬はナショナルチームの冬の遠征に参加。1月にはヤリギン国際大会(ロシア)で銅メダル。2月はワールドカップ(イラン)に出場。4月はアジア選手権(インド)、5月は東日本学生リーグ戦、6月は全日本選抜選手権、7月はユニバーシアード(ロシア)で銅メダルを獲得。8月はインカレで優勝。10月の東京国体では3位に入賞し、11月に今大会。そして来週19日には、ゴールデンGP決勝大会に出場するため、アゼルバイジャンに向けて出発する。

 試合がなかった3月にも大学主催の韓国遠征、9月には教育実習などをこなしているから、森下にとって、相当なハードスケジュールだった。その中で、多くの大会で結果を残していることは実力が十分な証拠。本人は「そんなに減量がなかったのと、大学の後半になりますと、学生の試合自体が少ないので、いい経験になりましたし、勝ちにこだわって戦うことができました」と、2016年リオ五輪に向けての下地ができたことを話した。

 その真骨頂が東京国体だ。3週間の教育実習明けで練習量は落ちているところに、拍車をかけたのがひざの負傷。「水がたまっていて痛みもあった」と、本来なら棄権してもおかしくない状況だったが、茨城県の看板を背負って出場。ベスト4まで進出し、どんな状況でもベストを尽くす姿勢を見せた。

■順風満帆ではなかった日体大での4年間

 1年時にチーム事情で学生の公式戦には1度も出場できない厳しい時期があり、2年下の高橋に負けてタイトルを逃すこともあった。順風満帆(まんぱん)な学生生活ではなかったが、学生最後の大会で圧倒的な優勝を見せ、若手ナンバーワンの実力を見せつけた。

 ロンドン・オリンピックが終わり、最軽量の55kg級は世代交代が起こるかと思われたが、今年の世界選手権はベテランの稲葉泰弘(警視庁)が出場。同オリンピック銅メダルの湯元進一(自衛隊)の復帰説も流れている。「そろそろ(先輩たちに)勝ちたいですよね…。本当は6月(全日本選抜選手権)で勝たなければならなかったのですが」と森下。

 1ヶ月に1度の実戦や高橋との壮絶な闘いを経て成長を遂げた森下。12月の全日本選手権で、本当の世代交代を実現させる。

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■森下史崇の今年の全成績

大会名 順 位 試合結果
1月 ヤリギン国際大会
(ロシア)
3位 1回戦 ◯[2-0(6-3,3-0)]Belek-Ool Kuzheget(ロシア)
2回戦 ◯[2-0(1-0,1-0)]Khuresh Donduk-Ool(ロシア)
3回戦 ●[0-2(0-5,3-6)]Artyom Gebekov(ロシア)
敗復戦 ◯[2-0(1-0,3-2)]Vladislaf Petrov(ロシア)
敗復戦 ◯[2-0(5-0,1-0)]Egor Dmitriev(ロシア)
3決戦 ◯[2-0(2-0,4-1)]Azamat Tuskaev(ロシア)
2月 ワールドカップ
(イラン)
3位 1回戦 ●[0-2(0-5,0-2)]Hassan Farman Rahimi (イラン)
2回戦 ○[2-0(4-0,1-0)]Obenson Blanc (米国)
3回戦 ○[2-0(4-0,1-1)]Mehmed Zeyti Feraim(ブルガリア)
4回戦  BYE
5回戦 ○[2-0(1-0,1-1)]Givi Davidovi(グルジア)
7・8決戦 ○[2-0(3-0,2-0)]Shokan Shingissov (カザフスタン)
3月 韓国遠征       
4月 アジア選手権
(インド)
5位 1回戦 ○[2-1(1-4、TF7-1,4-2)]Nodirjon Safarov(ウズベキスタン)
2回戦 ○[2-0(5-1,4-1)]Mohammad Tahmasebi Zadeh(イラン)
準決勝 ●[フォール、2P(0-1、F0-7)]Amit Kumar(インド)
3決戦 ●[フォール、2P(2-3、F0-3)]Rassul Kaliyev(カザフスタン)
5月 東日本学生リーグ戦   4回戦 ○[フォール、1P1:56(F8-0)]高田賢治(中大)
5回戦 ○[フォール、1P1:42(5F-0)]青木成樹(青山学院大)
6回戦 ●[0-2(1-2,0-1=2:03)]高橋侑希(山梨学院大)
7回戦 ○[2-0(3-0=2:03.6-0=1:41)]山田礼陽(日大)
6月 全日本選抜選手権 3位 1回戦  BYE
2回戦 ○[Tフォール、2P0:43(8-0)]中村倫也(専大)」
準決勝 ●[8-8B]高橋侑希(山梨学院大)
7月 ユニバーシアード 3位 1回戦 ○[Tフォール、(13-4)]Steven Takahashi(カナダ)
2回戦 ○[9-3]Kim Sung Gwon(韓国)
3回戦 ●[Tフォール、(0-7)]Nariman Israpilov(ロシア)
敗復戦 ○[5-3]Batbold Sodnomdash(モンゴル)
3決戦 ○[2-2]Otari Gogava(グルジア)
8月 全日本学生選手権 優勝 1回戦  BYE
2回戦 ○[Tフォール、1:52=8-0]高木恭平(青山学院大)
3回戦 ○[Tフォール、1:00=7-0]濱本翼(徳山大)
4回戦 ○[Tフォール、3:25=8-0]西洸大(早大)
5回戦 ○[Tフォール、4:27=7-0]山崎達哉(日体大)
準決勝 ○[Tフォール、5:22(10-3]西山凌代(拓大)
決 勝 ○[5-2]高橋侑希(山梨学院大)
10月 国民体育大会 3位 1回戦  BYE
2回戦 ○[Tフォール、1:50=10-3]荒木秀作(鳥取・倉吉東高教)
3回戦 ○[Tフォール、2:43=9-0]原田健太(ニトリ)
準決勝 ●[5-8]守田泰弘(和歌山県教育庁)
11月 全日本大学選手権 優勝 1回戦 ○[Tフォール、2:22=8-0]小島猛(東農大)
2回戦 ○[6-2]高橋侑希(山梨学院大)
3回戦 ○[Tフォール、2:06=7-0]竹田展大(専大)
準決勝 ○[Tフォール、2:06=7-0]西洸大(早大)
決 勝 ○[Tフォール、1:39=8-0]西山凌代(拓大)
11月 ゴールデンGP決勝大会    
12月 全日本選手権