※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫)
60kg級優勝の鴨居正和(山梨学院大)
初戦が全日本選抜選手権優勝の高谷大地(拓大)、2回戦が2年前のこの大会の王者で今年の国体優勝の池田智(日大)、3回戦がJOC杯優勝の中田陽(日体大)、準決勝が今年の東日本学生リーグ戦で大接戦を演じた春季新人選手権優勝の黒沢翔(早大)。
決勝は、2年生で西日本インカレ2連覇の有元伸悟(近大)。“安全パイ”と思われる選手が一人もおらず、実績があるか、伸び盛りの若手選手との闘いが続いた。組み合わせを見た直後は、さすがに弱気の虫が頭をもたげてきたようだ。しかし、昨年も厳しい組み合わせを勝ち抜いての優勝だったことを思い出し、「目の前の試合だけを考えて、1試合ごとに集中して」と言い聞かせて臨んだ。
終わってみると、「強い相手全員を倒せての優勝は気持ちいい」となり、にっこり笑顔。「国体では全然攻められないで負けてしまった。先に点を取って、相手が取り返しに来たところをカウンターで取る自分のレスリングを練習してきた。その成果が出せました」と振り返った。
昨年はこの大会で優勝し、今年は学生二冠。順調に階段を上がってはいるが、この日闘った高谷は全日本選抜王者であり、池田は国体王者。自分より先に全日本レベルのタイトルを取っているので、まだ自分が学生のナンバーワンだという気持ちはない。「来年に向けて、下からもどんどん来ていますし、怖いですね」と気持ちを引き締めた。 1回戦で期待の1年生、高谷大地を撃破した鴨居(赤)
鴨居の通常体重は63kg。「下には高橋(侑希)という強い選手がいるし、65kg級に上げるでしょう」とは言うものの、「まだ何も決まっていないみたいですし、切り替えができません」と、自分のやるべき道が見えてこないこと。決まってくれさえすれば、パワーアップに取り組むが、それもできない状況だ。
「とにかく、決まったことに全力を尽くします」。どんな形になろうとも、“地獄のブロック”を勝ち抜いた経験は役に立つことだろう。