2013.10.21

【全日本大学グレコローマン選手権・特集】2連覇したが、打倒高谷の目標は変わらず!…84kg級・北村公平(早大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=樋口郁夫)

 男子フリースタイル74kg級の強豪、北村公平(早大)が全日本大学グレコローマン選手権84kg級で優勝。昨年の74kg級に続いて2年連続優勝を達成した。

 しかし、優勝の喜びはなし。決勝で、勝負をかけたそり投げで星翔也(日体大)が右ひじを脱きゅうしての棄権勝ちだったからだ。「率直に喜べません。相手がけがをして勝つというのは後味が悪いし、申し訳ないという気持ちです」と喜びの表情はなかった。

 まったくのアクシデントであり、北村に非はない事態だが、担架で救急車に運ばれる選手を見れば、北村も早大陣営も喜べるものではない。「きれいに優勝して、チームと会場を盛り上げるのがボクの役目だと思っていました。それができなかったのは残念です」と、喜びのない優勝だった。

 問題のそり投げにいくまでは、攻撃の糸口がつかめない試合だった。「相手はグレコローマン専門の選手でしょうか? 差しがうまく、自分が防戦一方になってしまった」と終始押されていた内容。スタンドで「唯一できる技」という胴タックルを再三狙うも、その度に切られてしまい、0-2で試合が進む苦しい展開が続いた。

 第2ピリオドの終盤、やっとしっかりした胴タックルが決まり、勝負をかけたそり投げを仕掛けることができた。結果として相手の負傷となり、勝利を手にしたが、「終始押されてしまい、劣勢が続いたことは反省点です」と、試合内容も満足いくものではなかった。

■グレコローマンでも非凡な才能を見せたが、転向の意思はなし

 「胴タックルしかない」とは言うものの、本来はフリースタイルの選手。それで学生王者の菊池峻(青山学院大)や期待の新星の与那覇竜太(専大)を破った事実は、地力の強さを表している。今月初めの東京国体でもグレコローマン84kg級で3位に入賞し、非凡な才能を見せている。

 「グレコローマンの方が合っているのでは?」と思えるような結果が続いたが、本人は「フリースタイルの方が好きですから」と、スタイル転向の意思はなし。京都府やチームの事情で84kg級の出場となり、来月の全日本大学選手権も84kg級でエントリーした。

 しかし「フリースタイル74kg級の選手です」ときっぱり。同級には、ここ数年間、追い求めた高谷惣亮(ALSOK)がいる。打倒高谷の思いでここまできたからという理由もある。東京国体では、全日本学生選手権の決勝で破った山中良一(日体大)が高谷を破って優勝した。「悔しかったですね。自分がやるべきことを取られてしまって」と無念の表情。“先を越された”という事実によって、打倒高谷の気持ちがいっそう燃え上がったようだ。

 グレコローマンでも全日本王者を目指せそうな才能を見せたが、あくまでもフリースタイルに役立てるための通過点。「グレコローマンで得たものを、フリースタイルで生かしたい」。打倒高谷という目標は先を越されたが、全日本選手権で高谷を破るのは自分だ、と言わんばかりの表情で、本来の目標を見据えていた。