※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
優勝した横井(左)と津田
全日本大学グレコローマン選手権の96kg級で、大会史上初めて西日本の大学の選手が栄冠を獲得した。中京学院大を西日本リーグ戦で2季連続優勝に導いた原動力の横井健人主将で、準決勝でユニバーシアード代表の大坂昂(早大)をフォールで破っての堂々の優勝。同大学からは120kg級でも2年生の津田大健が2位へ入っており、東西格差の是正が一段と進んだことを示した。
横井は「うれしいです。やっとです。高校(岐南工高)の時もインターハイ、国体とも2位。大学でもJOC杯が3位で、今年のインカレ(全日本学生選手権)も3位。本当に全国大会の優勝がなかった。4年生でやっと優勝できて、本当にうれしいです」と、よどみない言葉で優勝の感想を話した。
■得意のそり投げ2発で決勝を制す
組み合わせは、優勝候補と目された大坂と米平安寛(日体大)、さらにインカレ3位の志喜屋正明(国士舘大)と同じブロック。すなわちインカレのベスト4が固まった。幸いだったのは、そのブロックの中では前記3選手が別のブロックで、勝ち上がってきた選手と準決勝で当たるトーナメントだったこと。「準決勝が勝負。そこで勝てば優勝の可能性がある」と言い聞かせて臨んだという。
準決勝で学生2位の大坂を破る
8月のインカレでは、大坂とは別ブロックで、準決勝で優勝した米平に0-4で敗れた。負けたものの、優勝した選手にテクニカルフォール負けしていないという事実が、「自分にもチャンスある」という気持ちになり、優勝の可能性を見出すことができた。組んで投げるというのが自分のスタイルで、そのスタイルを貫くことだけを考えたという。
準決勝に出てきたのは米平との激戦を制した大坂。大坂が米平戦が終わったあと、ルールで定められている最低間隔の15分後に闘うことになったこと対し、先に試合を終えていた横井は25分近くの試合間隔があり、横井に追い風が吹いていた。闘ってみると比較的簡単に差すことができたので、大坂のスタミナ切れを感じたという。
フォール勝ちという結果は、大坂が逆転を狙った技が自滅し、そこを押さえたもので、「ラッキーな部分はあった」と言うが、「それも自分が最初から取りにいった結果」と自画自賛。
西日本の選手として、この大会初の優勝を達成
決勝は「(優勝候補相手の)準決勝を勝ったのだから、絶対に勝てると思って臨んだ」。その意識が気負いとなったか、最初にテークダウンを奪われるなどして4点を失ったものの、得意のそり投げを2度決め、3点技2度でテクニカルフォール勝ち。「自分の得意な技を出し切れて勝てたので」と満足度も十分な優勝となった。
25日からは西日本学生選手権、来月は全日本大学選手権と西日本学生秋季リーグ戦、12月は全日本選手権と年内は両スタイルにまたがって試合が続く。「この勢いを続けたい」と全勝宣言。この大会までは全国一はなかったが、昨年あたりから「卒業してもレスリングを続けたい」という気持ちになっており、来春は自衛隊へ進むことが内定した。
いきなりの体育学校ではなく、一般自衛官として入隊して体育学校入りを目指すコースで、「燃え尽きるまでやりたい。オリンピックを目指したい」という気持ちからの決断。身長165cmは同級としては小さく、全日本王者の斎川哲克とは21cmの差があるが、「相手は差しづらいはず。下から攻めるレスリングで、これを長所にして闘いたい」と、早くも全日本内での躍進に気持ちを馳せていた。
前川に果敢にそり投げを仕掛けた津田
■全日本王者相手に先制した津田
120kg級で2位となった津田は、準決勝でカザフスタンからの留学生のオレッグ・ボルチン(山梨学院大)をテクニカルフォールで下す殊勲を上げての好成績。「自分の武器を最大限に生かして闘えたと思います」と振り返り、決勝の前川戦も「積極的に自分の技をかけられた」と言う。
世界選手権の日本代表と闘え、「課題が多く見つかった」と言うが、内容は「得意技のそり投げが最初に決まりながら、続けて決められなかったこと」。課題というより欲の深さとでも言うべきことで、上を目指す気持ちが表れている。「全日本チャンピオンに自分の技がかかることが分かった。次に頑張りたい」と結んだ。