※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
昨年、大逆転優勝を遂げた拓大。今年もドラマが生まれるか
今年の全日本大学グレコローマン選手権は10月17日(木)~18日(金)、東京・駒沢体育館で行われる。大学対抗得点は、昨年優勝の拓大が2年連続10度目の優勝を、8月の全日本学生選手権で4階級を制覇した日体大が2年ぶり15度目の優勝を、それぞれ目指すほか、早大が3階級で優勝の可能性を持つ。3大学によって争われそう。
大学対抗得点は、3階級を制すれば優勝が濃厚となるが、0点(9位以下)を含めて下位選手が多いと必ずしも優勝とはならない。昨年の拓大のように、1階級しか優勝しなくとも、まんべんに上位に進んで優勝したケースもある。(得点は優勝=12点、2位=9点、3位=6点、5位=3.5点、7位=2点、8位=1点)
昨年は、第1日の4階級終了時点で日体大が42点、早大が32点、拓大が24点だった。最終日に拓大が18点差をはね返し、54点を獲得して優勝する大逆転劇が展開された。拓大は今年も120kg級に1年生で学生王者に輝いた園田新を擁しており、84kg級の奥田啓介にも優勝の可能性がある。
多少リードされても重量級でばん回する可能性を持つので、軽量4階級で優勝はなくとも、いかに上位に食い込んでいるかが団体優勝のかぎとなるだろう。
日体大は昨年、軽量3階級を制し74kg級でも3位入賞を果たしたが、84~120kg級で3位以内が1人のみ。9.5点しか取れなかったことが響いた。今年は96kg級の米平安寛が安定しているので、その二の舞はないだろう。55kg級の木村洋貴、60kg級の松澤力也か太田忍で確実に優勝し、66、74kg級でも優勝、またはそれに近い成績を挙げていれば、第1日で団体優勝をほぼ手中にできる。
全日本学生選手権で1階級優勝の早大だが、84kg級の北村公平、96kg級の大坂昂、120kg級の前川勝利の3階級で優勝する力を秘めるほか、66kg級の中井堅太、74kg級の花山和寛にも優勝、またはそれに近い成績が期待できる。この5階級で、3階級優勝、2階級3位とすれば48点。第1日である程度の得点を稼ぎ、最終日に3階級制覇で優勝というケースもありうる。
各階級の見どころをさぐった。
木村洋貴
【55kg級】
全日本学生選手権はベスト4のうち3選手が日体大。優勝した木村洋貴(日体大)が出てくると思われる。ハイレベルの中でもまれているので、今回も優勝候補の最右翼だろう。
同2位で東日本学生春季新人戦優勝と伸び盛りの北村侑磨(専大)、国体3位の杉本涼輔(中大)らが、そのが城が崩せるか。杉本は国体で北村を破っており、打倒木村の一番手は杉本か? 団体優勝を目指す拓大は、高校時代に全国王者のある2年生の井上征洋の上位進出にかけるか。
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松澤力也
【60kg級】
全日本学生選手権優勝は松澤力也(日体大)だが、国体で松澤を破った同2位の太田忍(日体大)のどちらが出てくるか。どちらが代表となっても、優勝候補の筆頭。昨年2位で全日本学生選手権3位だった池田圭介(早大)がどう闘うか。
昨年3位で、JOC杯優勝、全日本選抜選手権3位と力をつけている雨宮隆二(山梨学院大)が優勝争いに加われるか。
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中村尚弥
【66kg級】
学生王者は1階級上に出場。同2位の中村尚弥(日体大)に挑むのは、同3位の中井堅太(早大)。ここに、昨年3位の湯田敬太(拓大)、昨年の全日本学生選手権2位の魚住彰吾(専大)らが加われるか。
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中村隆春
【74kg級】
全日本学生選手権で優勝し、国体でも2位に食い込んだ中村隆春(日体大)と、昨年優勝の北村公平(早大)の激突が予想されたが、北村は84kg級にエントリー。この階級の早大は全日本学生選手権66kg級優勝の花山和寛(早大)が出場する。1階級上でどう闘うか。
全日本学生選手権2位の椿和浩(九州共立大)、同3位でアジア・ジュニア選手権3位、国体3位と成長途上の阪部創(神奈川大)がどこまで通じるか。
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菊池峻
【84kg級】
全日本学生選手権で5試合中4試合にフォールまたはテクニカルフォールで勝った菊池崚(青山学院大)が強さを見せるか。国体でも3位に入り勢いがある。
全日本学生選手権2位の奥田啓介(拓大)が挑むほか、昨年74kg級で優勝した北村公平(早大)が参戦する。今年の国体は84kg級に出場して3位に食い込むなど、グレコローマンでも実力は証明済み。どちらかが菊池の二冠王を阻止するか。
日体大は、昨年3位の笹川久志か、全日本学生選手権で菊池と唯一判定(3-5)に持ち込んだ星翔也のどちらが出てくるか。昨年3位で全日本選抜選手権でも3位入賞の加賀谷庸一郎(国士舘大)、1年生ながら全日本学生選手権3位入賞の与那覇竜太(専大)らとともに、優勝戦線に加わる力はあるはず。
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米平安寛
【96kg級】
全日本学生選手権で勝ち、国体2位と力をつけている米平安寛(日体大)が、ユニバーシアード代表の大坂昂(早大)を同選手権決勝で1-0、国体準決勝で3-0と連勝している。勢いを持ち込めるか、大坂のリベンジなるか。
全日本学生選手権で米平に0-2で惜敗した田中哲矢(大東大)、同3位の志喜屋正明(国士舘大)と横井健人(中京学院大)がどう闘うか。志喜屋はJOC杯でも優勝した期待の選手。
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園田新
【120kg級】
世界選手権代表の前川勝利(早大)と、前川不在の同選手権で1年生王者に輝いた園田新(拓大)とが優勝を争うだろう。国体では園田がテクニカルフォール勝ち。前川は意地を見せねばなるまい。同選手権2位の岡倫之(日大)が両者の優勝を阻止できるか。
山梨学院大は、フリースタイルで圧倒的な強さを持つオレッグ・ボルチンが正エントリーしている。パワーを武器に、経験のないグレコローマンでも勝ち抜くことができるか。