2013.10.11

【東京国体・特集】1階級上で今季4個のタイトルを獲得…少年グレコローマン84kg級・武田光司(埼玉・埼玉栄)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=増渕由気子)


 埼玉栄の主将の役目を果たした! 東京国体の少年グレコローマン84kg級は、インターハイ王者の武田光司(埼玉・埼玉栄)が決勝で藤井達哉(滋賀・栗東)をわずか1分16秒でテクニカルフォール勝ち。3月の全国高校選抜選手権、インターハイに続き、両スタイルにまがたっての高校三冠王に。8月の全国高校グレコローマン選手権を入れるとタイトルは4つと、最高の成績で高校の大会を終えた。

 埼玉栄にとっては、3年前の保坂健(現早大)以来の快挙。武田も保坂同様の好成績を残したいと話していただけに、喜びもひとしおかと思われた。だが、武田は「84kg級だと相手がいないので、(喜びは)普通ですね」と開口一番。試合についても、気負うことなく「普通にやりました」と淡々と話した。

 憧れの“保坂先輩”以上に成績を出したにも関わらず、喜びを爆発させなかった理由があった。「本来、自分はフリースタイル74kg級の選手です。(強豪の)後輩が入ってきたので、その階級を譲って84kg級に出場していました」と、今シーズンはチーム事情によって無理に階級アップをして闘い通したという。

 74kg級は、今年の高校界で最も役者がそろった階級だった。シニアの選手をも脅かす浅井翼(京都・京都八幡)、頭抜けたパワーを持つ奥井眞生(和歌山・和歌山工)、そしてJOCアカデミーで英才教育を受けた白井勝太(東京・帝京)。この3年間は、この3人がタイトルを分け合った。

 「去年は74kg級で闘い、全部(この3選手に)負けました」。ベストの階級である74kg級に出場していたら、武田のタイトルは「0」だったかもしれない。それにもかかわらず、「本当は、負けても74kg級でやりたかったです」と口にし、3選手としのぎを削って自身の成長につなげたかったようだ。

 84kg級では「圧倒的に勝つことを意識していた」と内容にこだわり、今大会は無失点で優勝。「埼玉栄の主将としての役割は果たせた」と締めをしっかりできたことは、自己評価した。

 大学進学を希望し、レスリングも続ける予定。「大学では74kg級で闘う」ときっぱり宣言し、“3選手”への宣戦布告も。74kg級以上にパワーが必要な階級で敵なしの強さを誇った武田は、この1年間、84kg級で培ったパワーを武器に、大学で浅井ら3選手に成長の証を見せつける。