2013.10.08

【東京国体・特集】ハイレベルの成年グレコローマン60kg級を太田忍(山口・日体大)が制す

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(取材=増渕由気子、文=樋口郁夫)

 世界選手権の代表こそ出場しなかったものの、成年グレコローマン60kg級は「全日本選手権」と言ってもいいくらい日本のトップ選手が集まった。そこを制したのが、全日本学生選手権(インカレ)2位の太田忍(山口・日体大)。シニアになって初の全国タイトルを獲得した。

 インカレは、1週間前に出場した世界ジュニア選手権(55kg級=ブルガリア)との大会間隔の問題で60kg級に出場したものであり、本来はまだ55kg級の選手。それでいて60kg級の“準全日本選手権”を制したのだから、この優勝は大きなステップとなりそうだ。

 しかし、太田の口から出てきたのは「練習したことが全然できていませんし、反省だらけの試合。スタンドは消極的で、カウンター攻撃ばかりだった。差しからの攻撃がなかったので、それを帰ってから練習したい」といった敗者のような言葉。3連覇を狙った城戸義貴(熊本・自衛隊)との決勝も、14点を取ってのテクニカルフォールであるにもかかわらず、「20点か30点の内容。反省点だけが残った」と厳しく採点した。

 これは目指しているところの高さの表れだろう。初戦はインカレ決勝でテクニカルフォールで負けた松澤力也(長野・日体大)に10-1のテクニカルフォールでリベンジ。2回戦も55kg級インカレ王者の木村洋貴(山形・日体大)を9-1のテクニカルフォールで破る強さ。「練習ではボコボコにされている」とのことで、これだけでも実力アップを証明している。

 準決勝の峯村亮(神奈川・神奈川大職)も全日本選抜王者に輝いたことのある選手。6-5の1点差勝ちとはいえ、55kg級の体重でその壁を破ったのだから、60kg級でも日本のトップレベルの実力を身につけたことを意味する。

 山口・柳井学園高時代からグレコローマンで頭角を現していた選手で、大学進学後もJOC杯や新人戦での優勝を重ね、昨年の世界ジュニア選手権は3位と海外での実績も持っている。今後の飛躍が楽しみだが、目下の悩みは、新しい階級区分が決まっていないため、体づくりをどう進めていいか分からないこと。

 最軽量が57kg級とも60kg級とも言われており、それによって筋力トレーニングのやり方が違ってくる。太田に限らず、「早く決めてくれ」というのが、このあたりの階級の選手の偽らざる気持ちだろう。