※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(取材=増渕由気子、文=樋口郁夫) 優勝直後はにっこりだが、出てきた言葉は反省の弁ばかり
インカレは、1週間前に出場した世界ジュニア選手権(55kg級=ブルガリア)との大会間隔の問題で60kg級に出場したものであり、本来はまだ55kg級の選手。それでいて60kg級の“準全日本選手権”を制したのだから、この優勝は大きなステップとなりそうだ。
しかし、太田の口から出てきたのは「練習したことが全然できていませんし、反省だらけの試合。スタンドは消極的で、カウンター攻撃ばかりだった。差しからの攻撃がなかったので、それを帰ってから練習したい」といった敗者のような言葉。3連覇を狙った城戸義貴(熊本・自衛隊)との決勝も、14点を取ってのテクニカルフォールであるにもかかわらず、「20点か30点の内容。反省点だけが残った」と厳しく採点した。 決勝も積極的に攻めた太田
準決勝の峯村亮(神奈川・神奈川大職)も全日本選抜王者に輝いたことのある選手。6-5の1点差勝ちとはいえ、55kg級の体重でその壁を破ったのだから、60kg級でも日本のトップレベルの実力を身につけたことを意味する。
山口・柳井学園高時代からグレコローマンで頭角を現していた選手で、大学進学後もJOC杯や新人戦での優勝を重ね、昨年の世界ジュニア選手権は3位と海外での実績も持っている。今後の飛躍が楽しみだが、目下の悩みは、新しい階級区分が決まっていないため、体づくりをどう進めていいか分からないこと。
最軽量が57kg級とも60kg級とも言われており、それによって筋力トレーニングのやり方が違ってくる。太田に限らず、「早く決めてくれ」というのが、このあたりの階級の選手の偽らざる気持ちだろう。