※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) 120kg級で2連覇達成の斎川哲克
谷田のブロックには世界選手権代表の前川勝利(茨城・早大)や全日本学生王者の園田新(滋賀・拓大)もいて、そのトーナメントで優勝したのだから、この階級でも日本一を証明したことになる。「前川、負けましたね。(勝った)園田が上がってくると思ったけど…。ま、だれが相手でも、出る以上は負けられません」と、1階級上に出るからといって「負けてもいい」といった気持ちはまったくなし。前年王者として、また重量級の第一人者として、それも当然だろう。
ただ、世界選手権で闘ってから中2週間での試合。ハンガリーからの移動もあり、コンディショニングにはちょっぴり苦労した様子。単に休むだけでなく、ジョギングやウエートトレーニングで汗を流して疲れをとることに努めたが、「体が重い感じはしましたね」と言う。
準決勝の中村淳志(奈良・奈良県体協)戦で、強烈な“ぶちかまし”で3点を先制されたのは、その影響か? 「いや、、、やばいと思いました」と、120kg級選手のパワーにやられたということらしいが、「体重が軽い分動けるので、足を動かして闘った。相手がばてているの分かって、そこから技の組み立てできてよかった。(120kg級の選手と闘う時も)組み手でまさって、差して、動かして、相手をばてさせて攻める基本は変わりません」と言う。
ロンドン・オリンピックのあと、地元の栃木県からは教員として戻って栃木のレスリングを強くしてくれることを望まれている。その気持ちは十分にあり、「今後は、栃木のレスリングが強くなってくれることを一番に考えている」と言う。教員試験も受けて、早ければ来年にも県の教員として戻る可能性もあるが、合否の発表はまだ。現時点では何も決まっていない。 決勝も快勝! “無差別級”の日本一を証明した
世界選手権の3位決定戦が1点差で負けだったことや、優勝したロシアの選手から4点取ったこと(4-6)、周囲から「やっと96kg級の形、闘い方になってきた」と言われること、現在27歳と年齢的にまだ現役を続けられることなど、多くの要素がからみあい、進退を決められないでいる。
特に、世界チャンピオンと4-6の試合をしたことが大きい。攻撃の糸口もつかめずに0-2で負けるのと、テークダウンを奪って4-6で負けるのとでは、同じ2点差での負けであっても「全然違う」という。世界一に手が届く距離にまで実力を伸ばしいるたことで、悩みは深くなったところだ。
とりあえず、12月の全日本選手権へ向けて練習を続けることは決めている。「自分が頑張ることで、(栃木で)背中を見て追っかけてくれる選手が増えればいい」と話し、全力ファイトによって故郷のレスリング熱を高めていくことを誓った。