※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【ブダペスト(ハンガリー)、文=池田安佑美、撮影=保高幸子】目標の1勝ならず-。男子日本代表で唯一、大学生で世界選手権代表になった男子グレコローマン120kg級の前川勝利(早大)は、初戦でチュニジア選手を攻め切れず、3コーションを受けて警告負けとなった。敗者復活戦もなく1試合で初の世界選手権を終えた。
21歳でつかんだ世界選手権の舞台での目標は「1勝を挙げること」。組み合わせは、初戦がレスリング途上国であるチュニジア。勝てばアジアの強豪国であるカザフスタンだった。「チュニジアの選手は、試合の数日前に、一緒に練習した相手だったんです。その時は、バラにできた(圧倒した)ので勝つチャンス」と気合を入れてマットに上がった。
積極的に前に出て先にコーションを獲ったのは前川だった。パーテールポジションで攻撃権を得るとスタンドを選択し、攻め続ける。だが、次のコーションは前川にきてしまった。前半はスコア0-0で、コーションの数は1-1。
第2ピリオドも前に出ているのは前川で、前半に相手に2度目のコーションで与えて前川が1-0と先制。2コーションとなり後がない状況でも下がり続ける相手。第2ピリオドの中盤に再びレフェリーが笛を吹いた。前川は「相手が3コーションで勝ったと思った」とレフェリーを見やると、前川にコーション。これで得点は1-1、コーション2-2で、ラストポイントで前川が負けている状況に。
攻めるしかない前川は、さらに前に出てコーションを狙い。しかし、レフェリーは前川に3つめのコーションを与えた。前川は「自分が攻めているつもりだった」と振り返るが、審判団は前川が頭を付けて前に出ている部分を見てコーションを取ったようだ。その事実を知った前川は「(新ルールの)対策がしっかりできていなかった。練習不足です」と下を向いた。
悔やまれるのは、数日前の練習でバラにしていた相手だったこと。「パーテールポジションでグラウンドを選択するべきだったかもしれない。試合の組み立てもしっかり考えていかなければ」。若手の前川にとって“勉強”させられた世界選手権だった。