2013.09.22

【世界選手権・特集】男子グレコローマン96kg級・斎川哲克(両毛ヤクルト販売)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 【ブダペスト(ハンガリー)、文=池田安佑美、撮影=保高幸子】重量級で6年ぶりのファイナルに進出! ロンドン・オリンピックの男子グレコローマン96kg級代表の斎川哲克(両毛ヤクルト販売)が3度目の世界選手権で大化けした。

 84kg級時代に2度出場した世界選手権は、いずれも序盤で敗退し、96kg級に階級アップしてつかんだロンドン・オリンピックでも初戦敗退。大舞台での上位進出がなかったが、今大会は準々決勝でロシアのニキタ・メルニコフに敗れたあと、敗者復活戦でフィンランド選手を破って3位決定戦に進出した。

 3位決定戦では、ロンドン・オリンピック代表のシャルバ・ガダバーゼ(アゼルバイジャン)に1-2で惜敗したものの、現時点で日本男子最高の5位に食い込んだ。

 斎川は「最後負けたら、全然よくないです」と、5位の“快挙”に喜びは表さなかった。3位決定戦の前半は斎川が押され気味で、投げとローリングで2点を失ったが、後半は斎川が押し気味に進め、1ポイント・コーションを取って1点差に迫った。残り時間も十分にある中、相手がばてていることもあり、「スタンドに勝機があると思った」とコーションはスタンドを選択。

 3度目のコーションを狙うべく猛プッシュしたが、そのまま展開がなく試合終了となった。「取り切れないのも自分の実力。ばてさせても、ポイントを取らないとしょうがない」と、最後に取り切る力を課題に挙げた。

 ただ、手ごたえは感じた。「体力の面で日本人は決して劣っていないと思う。日本でやっているトレーニングは世界トップレベル」と、やってきた練習は間違いでなかったことを確信。「あとは海外選手の免疫をつけたい」と経験値アップを目標とした。

 その必要性を感じたのは4回戦のロシア戦だ。レスリングは腕を相手の脇に差して前に出ることが基本だが、メルニコフは簡単に差させ、右腕で相手の腕を抱えてこんでくるスタイルだった。「最初から抱えてくる選手はいない。何やってくるのかな、と警戒した」。

 実際に、試合中盤にかかえた腕から強烈な投げ捨てで斎川を吹っ飛ばした。斎川が「腕がなくなったかと思った」というほど、強烈な投げ。差し合いには慣れているが、かかえてくる選手の対応にちょっと戸惑ってしまったようだ。

 免疫をつけるために海外武者修行を望んでいるのかと思われたが、「海外に行くだけで強くなるわけではない。日本でできないことはない。協会の先生方が行くように提案があったら、お願いしたいですけど」と強くは望まなかった。

 フリースタイルの山口剛(ブシロード)とともに、今大会、現時点でもっともと熱い試合を展開した両スタイルの96kg級。新ルールを生かし、体力勝負に持ちこめば重量級でも十分に活躍できることを証明した大会だった。