※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
左ひざを痛め、無念の棄権となった前田
試合を続行しようとしたが、足に力が入らず、5-9とリードを奪われた時点で、負傷棄権となった。いい流れで試合をしていただけに「負けたという現実味がないというか、まだ実感できていない」と声を絞り出した。
世界王者の機運が巡ってきた大会だった。2009年の初出場の世界選手権で5位となり、次世代のホープとして注目されたが、チーム事情によって戦列を離れることを余儀なくされ、ナショナルチームから脱落。その後、スランプを経験。ロンドン・オリンピックはあと一歩で逃した。
それだけに4年ぶりの大舞台にかける気持ちは半端ではなかった。実際に調子もよく、高田裕司専務理事を含め各コーチが前田の調子のよさにメダル獲得に期待を寄せていた。 台風で飛行機が遅れ、当日朝に現地入りした母・寿美枝さん(中央)の応援実らず
「左足が抜けなくて、横にも逃がせない状況でした。そこから、ひざが曲がらない方向に行ってしまって…。けっこう音がしました。たぶんハムストリングが切れたんだと思う」。一瞬の出来事に「(現状が)理解できない状況です」とつぶやいた。
この大会にかけていた気持ちが強かったからだろう、前田はすぐに棄権を申し出ず、左足をひきずりながらマット中央へ。試合を再開しようとするが、力が入らずにタイムを取ってしまい、1ポイント・コーション。試合を再開しても簡単にバックを取られてしまう。これまでと思ったセコンドが5-9の時点で棄権を申し入れて、試合終了となった。
「高田専務やいろいろな方に期待してもらっていたのに、本当に申し訳ないという気持ちが強いです」。組み合わせも強豪選手が軒並み反対ブロックとなり、前田に追い風が吹いていただけに悔やまれる負傷棄権だった。