※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
クマール(インド=赤)の猛攻をしのぎ切れなかった稲葉
クマールが下馬評通りに決勝に進出したため、稲葉は敗者復活に回ったが、フランス選手との一戦で、4-0とリードして追加ポイントを取りに行ったところで肩を亜脱きゅうして動けなくなり、フォール負け。2大会連続の銅メダル獲得はならなかった。
半分以上の階級が初出場とフレッシュな顔ぶれとなった男子チームで、稲葉は唯一世界選手権でメダルを獲った過去を持つ。日本のお家芸である軽量級代表として、メダル候補の筆頭であり、期待をかけられていた。
まさかの1回戦敗退に「期待されていたのに、こんな試合しかできなくて情けないです」と悔しさをにじませた。
昨年、目標だったロンドン・オリンピック代表を逃し、「リオデジャネイロとは言わず、1年1年やっていきたい」と、一つひとつの大会に進退をかけて挑んでいただけに、敗戦のショックは大きかった。
今年の春に結婚し、今回は新妻の沙央里さんが応援にかけつけていた。昨年末から今シーズンにかけて首のヘルニアに苦しんだが、新妻と二人三脚で治療に専念し、問題ないくらいに回復していた。世界へのキップは新妻の存在が大きく、それだけに結果を出したかった。「せっかくハンガリーまで応援に来てくれたのに、期待に応えられなくて悔しいです」と声を震わせた。
沙央里さんに「また、頑張ろう」と声をかけられたことで稲葉の意思は固まった。「(試合に負けて)悔しかったですし、世界選手権の悔しさは世界選手権でしか返せない。悔しい気持ちがある間はいけると思う」と1から出直し、来年の世界選手権でリベンジすることを誓った。