2013.09.17

【世界選手権・特集】男子フリースタイル66kg級・井上貴尋(東京・自由ヶ丘学園高教)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 【ブダペスト(ハンガリー)、文=池田安佑美、撮影=保高幸子】ロンドン・オリンピックで米満達弘が金メダルを獲得した男子フリースタイル66kg級。オリンピック翌年の世界選手権には、今年3月に日体大を卒業したばかりの井上貴尋(東京・自由ヶ丘学園高教)が挑み、本戦と敗者復活戦含めて2勝2敗の成績で終えた。

 世界選手権初出場で4試合を経験したが、メダルに届かなかった結果について、開口一番、「これが自分の全力(を出した結果)だと思います。全力を出してこの結果なんで仕方がないです」とに話す一方、「スタンドでは差しができた。(世界と)あまり差を感じなかった。課題はグラウンドです」と、多くの収穫を得たようだ。

 初戦のブルガリア戦は、序盤に一本背負いで3点を奪ってペースをつかんで勝利したが、2回戦ではロンドン・オリンピック3位のリーバン・アスクイ(キューバ)に、いいところまで追い上げながら惜敗した。アスクイが決勝に進んで敗者復活戦に出場。同第2試合で北朝鮮のカン・ジンヒョクに0-7のテクニカルフォール負けで試合を終えた。

 いいところなく終わった北朝鮮戦を「全部後手に回ってしまい、悔いの残る試合だった」と評する一方で、「(オリンピック3位の)キューバにスタンドでパワー負けしたつもりはなかった。意外に闘えた」と振り返り、自身の長所、短所それぞれがくっきりと出た大会だった。

 金メダリストの米満が欠場した全日本選抜選手権で優勝して得た世界のキップ。代表を決めた直後は「大学を卒業したことで引退だと思っていた」と話し、“まさか”の世界選手権出場だったが、6月からこの3か月間、世界のトップを目指して練習を積んだ。その結果が初出場で2勝という成績だった。

 今後もレスリングを続けていくことは決めている。「企業から(プロ選手として)声がかかったら迷いますけど、とりあえずは教員をやりながら選手を続けます」と、現状の環境でさらなる進化を目指すようだ。

 階級については「63kg級あたりがベスト。それに近い階級があるならグレコローマンに転向してもいい」と、高校、大学と両スタイルでタイトルを獲得した器用さを活かして柔軟に対応する姿勢を見せた。