※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《世界選手権へかけるシリーズ》
男子フリースタイル | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
男子グレコローマン | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
女 子 | 48kg級 | 51kg級 | 55kg級 | 59kg級 | 63kg級 | 67kg級 | 72kg級 |
(文=樋口郁夫)
2002年に現在の7階級になった女子の階級で、まだ一度も世界一の選手が生まれていないのが67kg級だ。来年からは6階級に変わる予定。まだ新しい階級区分は未定だが、今年が最後の67kg級となる可能性が高い。“ラスト・チャンス”に挑むのが、初出場の土性沙羅(至学館大=右写真)。
前哨戦とも言うべき7月のユニバーシアード(ロシア)では、4月のアジア選手権(インド)優勝のナサンブルマー・オチルバト(モンゴル)を破って優勝。「このところ国際大会で負けが続いていたので、自信がつきました」と気持ちも燃え上がり、初の世界選手権へ挑む。
■出だしは最高だった国際大会のデビュー時
吉田沙保里(ALSOK)と同じの三重・一志ジュニア教室の出身。全国少年少女選手権3連覇(4~6年生)、全国中学生選手権は3位のあと2連覇、全国高校生女子選手権3連覇など、向かうところ敵なしの進撃を続けた。海外でも、16歳(高校2年生)の時に出場した2011年のゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)に優勝。直後にあった世界ジュニア選手権(ルーマニア)でも勝ち、国内外で華々しい活躍だった。
ところが、世界はそれほど甘くない。2012年2月に出場したアジア選手権(韓国)は、1回戦で中国選手に敗れ、敗者復活戦に回れなかった。「勝てる、という気持ちで臨んだ心の油断もあったようだ」と分析する。この結果に「自信がなくなり、やる気もおきなくなってしまいました」-。 全日本合宿で練習する土性
■身長のハンディを動くことで克服
そんな土性を立ち直らせてくれたのが、世界ジュニア選手権でのチームメートの活躍だった。自身は3位に終わったこの大会、日本勢は55kg級の村田夏南子(日大)ら4選手が優勝。「自分は何をやっているんだ。こんなことじゃダメだ」と気持ちが高揚してきた。
12月の全日本選手権は、ゴールデンGP決勝で同じ3位だった飯島千晶(日大=現警視庁)を破って優勝。今年6月の全日本選抜選手権は昨年世界3位の井上佳子(クリナップ)に勝ち、晴れて世界選手権のキップを勝ち取った。今回の世界選手権は、気持ちが戻り、ユニバーシアード・チャンピオンという実績をもって臨む大会だ。
16歳でゴールデンGP決勝大会で優勝した時の勢いをつくれば、優勝は十分に可能だ。不安材料があるとすれば、身長159cmは世界の67kg級の中では低い部類に入ること。昨年の世界チャンピオンのアデライン・グレイ(米国)は173cmあり、2位のドロシー・イーツ(カナダ)も163cm。3位に入ったバシリサ・マルザリウク(ベラルーシ)は179cmもある。 2011年7月、16歳でゴールデンGP決勝大会で優勝
■女子のオリンピック階級が増える朗報に気持ちが盛り上がる
そんな土性に、オリンピック階級が4階級から6階級に増えることは大きな朗報だ。今のままなら、オリンピックは63kg級に落とすか、72kg級に上げなければならない。63kg級なら減量で体力が根こそぎもっていかれる。72kg級は体格的に大きなハンディだ。
新階級は自分にぴったりの階級が新設される可能性が高い。以前、女子が6階級だった時の階級は、46・51・56・62・68・75kg級。これなら68kg級で闘え、今とほとんど変わりない階級でオリンピックを目指せる。
「すごくうれしい。気持ちの面で全然違います」。世界選手権の出場がそのままオリンピックにつながらなかったこれまでと違い、その2つがイコールとなる今、土性の気持ちは最高に燃えている。
土性沙羅(どしょう・さら=至学館大) 初出場
1994年10月17日生まれ、18歳。三重県出身。三重・一志ジュニア教室~愛知・至学館高卒。2010~12年全国高校女子選手権で優勝するとともに、2011年全日本選抜選手権優勝、世界ジュニア選手権優勝、全日本選手権優勝と国内外で活躍。2012年は世界選手権出場を逃したが、全日本選手権で2連覇。今年は7月のユニバーシアードで優勝。159cm。
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◎土性沙羅の最近の国際大会成績