※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 金メダル3個を持って帰国した日本チーム
日本は49kg級の加賀田葵夏(東京・文化学園大杉並高)、52kg級の向田真優(JOCアカデミー/東京・安部学院高)、65kg級の古市雅子(JOCアカデミー/東京・安部学院高)の3選手が優勝。古市は3連覇、向田と加賀田は2連覇と実力を見せつけた。
一方、約半分が海外初遠征の選手だった。吉村祥子監督(エステティックTBC)は、「期待と不安が半分ずつありました。外国選手の力強さだったり、スタイルの違いに戸惑って負けてしまった選手もいて、どうしようかなと…」と、当初は戸惑ったそうだ。だが、経験豊富な古市らが海外試合でのアップや調整方法を教えるなどして緊急修正。
43kg級の田中亜弥瑠(茨城・霞ヶ浦高)など、敗者復活戦で勝ち上がって3位に食い込んだ選手が3人いた。吉村監督は「とても前向きで、言われたことを実行することで、自分のレスリングが少しずつできるようになっていきました」と振り返った。38kg級は出場資格などの問題で派遣ができず、1階級のハンデがあったにも関わらず、優勝したロシアと3点差の2位は大健闘と言えよう。 世界大会では初めて女性指導者だけの遠征だった
また、軽量級に定評がある日本だが、65kg級の古市が3連覇を達成。60kg級銅メダルの今井栞海(京都・海洋高)、70kg級2位の進藤芽伊(大阪・堺リベラル中)など、重量級でもしっかりとメダルを獲ってこれたことは大きかった。
「今井はレスリング歴が浅いようですが、素晴らしい脚力を持っています。身長もあるので、今後、鍛えていったら面白い」と話せば、中学3年で結果を残した進藤については「最初は、ものすごい緊張をして、こちらもどうしようかなと思いましたが、1戦1戦頼もしくなっていった。筋力もある選手なので、技術面を鍛えていけば」と、日本の課題である重量級の未来をになうであろう選手たちに、潜在能力の開花を期待した。
レスリング界はこの半年間、オリンピック除外問題に揺れている。吉村監督は「今大会は、試合後にチーム間でお互いを称えあったり、表彰式はコーチも含めて大いに盛り上がるものになったりと、昨年とは違った仲間という雰囲気があった。レスリングの存続問題が関係しているのだと思う。あらめてレスリングは素晴らしい組織だと思いました」と遠征を締めくくった。
なお、2011年に復活したこの大会だが、新しい体制の国際レスリング連盟(FILA)はカデットは大陸選手権までという方針を打ち出しており、現段階では来年の開催はない予定だという。
■49kg級の加賀田葵夏(東京・文化学園大杉並高)「去年1度経験し、雰囲気とかは慣れていたこともあり、去年よりいい試合ができました。内容も去年より満足しています。インターハイでは何もできずに負けてしまいましたが、今回は、足もよく動けたし、相手のしかけた技に反応したり、自分からタックルに入れたりすることができましたので本当によかったです。来年はこの大会がないようですが、別の海外の大会で優勝したいです」。
■52kg級優勝・向田真優(JOCアカデミー/東京・安部学院高)「インターハイで1位になったので、世界でも1位になれるように頑張りました。去年は準決勝、決勝と失点がありましたが、今回は無失点でした。でも、外国選手の力にびびッてしまったこともありました。最後の世界カデット選手権出場で勝ててよかったです。(12月の)全日本選手権では一つでも順位をあげて上位に食い込みたいです」
■65kg級優勝・古市雅子(JOCアカデミー/東京・安部学院高)「優勝できたのはうれしかったですが、相手選手に合わせてしまって自分の動きができず、タックルが遠くなってしまった。決勝でも1点取られてしまったので、最後の世界カデット選手権出場でしたが、最高の闘いはできませんでした。反省を生かして、今後も頑張りたいです。今後は全日本の大会で闘えるようにしたいです」