※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫) 2連覇を達成した赤熊
しかし、赤熊の顔には喜びの表情はなし。最初に出てきた言葉は、「ホッとしましたけど、試合内容が全然ダメでした。内閣(全日本大学選手権)は余裕をもって優勝できるように頑張りたい」という反省の弁だった。
それもそのはず。決勝は、一時は7-2とリードし、テクニカルフォール勝ちも考えられる途中だったが、第2ピリオドの中盤には9-8と追い上げられ、10-10と追いつかれる展開。終了間際にタックルを決め、かろうじて勝ったものの、この内容では満足できないのも当然だろう。
「最後、ばててしまいまして…。体力づくりをしていかなければなりません」と振り返る。それでも、10-10と追いつかれた時は、「ここでいかなければダメだ」と力を振り絞ったそうで、勝負どころで競り勝てるだけの実力は評価されていいことではないか。
■今年6月には全日本王者を破った実力者
7月のユニバーシアード(ロシア)の日本代表であり、学生2連覇と、学生界での地位は確立した感がある。全日本レベルでの知名度は今ひとつかもしれないが、6月の全日本選抜選手権では、全日本王者の松本真也(警視庁)を破る殊勲を挙げており(決勝で松本篤史に敗れる)、全日本チャンピオンになってもおかしくない実力はつけている。 大激戦の末、決勝を制した赤熊(赤)
同時に、今年は2月にデーブ・シュルツ国際大会(米国)、7月にユニバーシアードと、海外での試合も経験し、世界に飛び出した年でもある。ともにメダルには手が届かず、「自分の足りないところや課題が見つかりました」と、世界の壁を感じたものの、「次の機会には勝てるように頑張りたい」と気持ちは前を向いている。
「外国選手は力が全然違う。スピードと組み手などの細かいテクニックを使ってタックルで攻める闘い方を身につけたい」と、世界での闘い方も研究中。卒業後もレスリングのできる環境を求めており、全日本王者、そして世界へ飛躍するベースは十分にできている。
不満の残るインカレV2だったものの、この勢いでフリースタイル84kg級に旋風を起こせるか?