2013.08.23

【全日本学生選手権・特集】世界を目指す通過点!…女子は至学館大が4階級制覇

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)

 全日本学生選手権(インカレ)の女子は、“世界最強の女子レス軍団”と言われる至学館大勢が4階級で優勝。強さを存分に発揮した。

 同大学が4階級で勝ったのは、「中京女大」時代の2008年以来で、「至学館大」に名称変更してからは初めて。

 48kg級世界選手権代表の登坂絵莉が51kg級で勝ち、同じく世界代表の土性沙羅が自身の階級である67kg級で優勝。キャプテンで63kg級の渡利璃穏も2011年の67kg級に続いて優勝を飾り、72kg級の吉井瑞江も制した。栄和人監督は「至学館旋風です」と胸を張った。

■優勝しても不満を口にするのは向上心の裏返し…渡利璃穏主将

 世界選手権代表の登坂と土性の優勝は、ある意味で当然の結果と言えたが、63kg級の渡利にも貫録があった。初戦で先週行われた世界ジュニア選手権(ブルガリア)の59kg級優勝、モンゴルからの留学生スヘー・ツェレメンド(環太平洋大)を下し、決勝も圧勝。「今日は勝たなければいけない大会」と勝利にも浮かれることはなかった。

 それも当然。渡利は無敵の強さを誇るオリンピック3連覇の伊調馨(ALSOK)をターゲットにしているからだ。6月の全日本選抜選手権では決勝で対戦し「両足タックルに入っていい場面があった。そこで取れなかったのは、馨さんの腰の重さとうまさだと思う」と、力の差を痛感している。

 今大会は「タックルでしっかり攻めて、アンクルホールドなど次の攻撃につなげること」を課題に試合をした。タックルは決まったものの、次の技にうまくつながらなかったところに不満が残った。それでも優勝して課題をすぐに口にするあたりは意識の高さの裏返し。伊調との差を少しずつではあるが詰めているという実感も持っている。

■大会直前の全日本合宿でもハードトレーニングを実行

  至学館大は、オリンピック・チャンピオンをはじめ世界のトップ選手を数多く輩出し、日本の女子レスリングの根幹をなしてきた。今年の世界選手権も5階級が至学館大の学生とOB。勢いは衰えていない。昨年のこの大会は1階級優勝とやや低調だったが、今年は7月のユニバーシアード(ロシア)に6階級で代表を送り、金メダルを取った3選手は至学館大の選手。今月の世界ジュニア選手権でも優勝選手を輩出し、学生レベルでも勢いを取り戻した。 

 栄監督は「やはり吉田沙保里の影響が大きい。彼女がチームを引っ張ってくれるので、チーム全員の意識が高まる。私がいなくてもいいくらいだ」と、日本が誇る女王がチームの底上げにつながっていると明かす一方、選手の姿勢や団結力にも言及。

 実はこの大会直前に新潟・十日町市で全日本合宿があり、世界選手権代表の夏の追い込み練習が行われていた。大会前だったので、全日本の3位以内の選手であっても学生選手の参加は強制していなかったという。大会前はハードトレーニングより大会へ向けてのコンディションづくりに力を入れるのは当然だが、至学館大の選手は当然のごとく合宿参加の意思を示してくれ、世界選手権の代表に合わせたハードトレーニングを実行。計量の日に十日町から東京入りした。

 栄監督は合宿での練習ぶりに驚いた。「登坂と土性は、インカレための調整練習というより世界選手権へ向けての強化練習だったし、他の選手も必死になって吉田や伊調(馨)に向かっていった。代表選手の練習に協力してくれ、自分の実力アップに力を入れたていた」とのこと。目がこの大会ではなく、あくまでも世界に向いていることを感じたそうだ。

 「そういう姿勢が最高の形で出たと思う。これからも、常に世界を目指した気持ちでやっていきたい」と栄監督。世界選手権へ向け、最高の気分で夏の闘いを乗り越えた。