※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《世界選手権へかけるシリーズ》
男子フリースタイル | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
男子グレコローマン | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
女 子 | 48kg級 | 51kg級 | 55kg級 | 59kg級 | 63kg級 | 67kg級 | 72kg級 |
(文=保高幸子)
オリンピックに3度出場した浜口京子(ジャパンビバレッジ)が長年けん引してきた女子72kg級。浜口はまだ進退を明らかにしていないが、今年の世界選手権は、昨年に続いて鈴木博恵(クリナップ=右写真)が出場する。
これまで、浜口の影に隠れながらも、2010年世界学生選手権(イタリア)2位、2011年ゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)3位など、国際舞台でそこそこの成績は残してきた。しかし、ロンドン・オリンピックの1ヶ月半後に行われた昨年の世界選手権(カナダ)は、苦い思い出の大会となってしまった。
吉田沙保里(ALSOK)の世界大会の優勝記録更新で日本からも多くの報道陣が海を渡り、にぎやかな大会となったが、初出場の鈴木にとっては反省しか残らないものだった。「世界選手権の雰囲気にのまれた感じでした」。許晴(中国)に対し1回戦で1-2(3-0,1-1,0-1)で黒星。敗者復活戦へ回れず、注目されることなく終わった大会となった。
■今年4月から東京で一人暮らしをし、自分を追い込む
2度目の世界挑戦は、同じ負け方はしない。鈴木には今年大きな変化があった。4月から東京で一人暮らしを始めたことだ。「(クリナップの)今村浩之監督と私の父と3人でよく話し、練習環境を変えてみようということになりました」と説明する。 全日本合宿で練習する鈴木(右)
練習は警視庁や安部学院高などにお世話になっている。今までの“与えられたものを受け入れてきた”姿勢から、“家事も練習場所も自分で調整する”にがらりと変わった。生活の変化にも慣れ、「いろいろな所で練習させてもらって、勉強になります」と意識が上がってきた。
本人は、一人暮らしを機に「生まれ変われるように頑張ります」と謙そんするが、もう生まれ変わったといってもいいだろう。一人暮らしを決意したあとの今年3月のワールドカップ(W杯=モンゴル)では、最終戦の米国との3位決定戦で、チームスコア3-3でマットに上がり、フォール勝ちして日本に銅メダルを引き寄せた。
最も緊張する場面で実力を出し切れたことは、今後の選手生活の大きな自信となったことだろう。大会を通じてオドンチメグ・バドラク(モンゴル)に1敗を喫したものの、勝ち点の関係で日本選手で唯一、個人順位1位にとなり、主将の重責を果たした形へ。
■アジア女王として臨む世界選手権だが… 4月にアジア・チャンピオンに輝いた鈴木。9月も表彰台の一番高い所に立てるか。
その克服には練習を積むことが必要不可欠だが、「練習でもポイントを取られるのが怖くてなかなか技を仕掛けられない」と分析しており、精神面の強さも必要と痛感している。残り1ヶ月の練習で、この面をできるだけ克服したい。
9月の世界選手権は、アジア・チャンピオンとして臨む大会となり、欧州や中南米の選手からのマークも厳しくなることが予想される。だが、鈴木の心情は違う。
「昨年は1回戦負けなので、挑戦者の気持ちで闘います。世界ではまだまだトップレベルではないと思っています。私はまだ何も失うものがないので、そこを強みにしたい。今回はポイントを取られるのを怖がらず、積極的なレスリングをして、リオデジャネイロ・オリンピックへとつなげていきたいです」。
すべてはリオデジャネイロでメダルを獲るため。まずは世界選手権の舞台で、生まれ変わった鈴木博恵を見せてくれるだろう。
鈴木博恵(すずき・ひろえ=クリナップ) 2年連続2度目の出場
1987年8月19日、京都府生まれ、25歳(大会時26歳)。京都宇治教室出身。京都・立命館宇治高~立命館大卒。2008・09年全日本学生選手権優勝のあと、2010年世界学生選手権2位。
2011年ゴールデンGP決勝大会3位。2012年に世界選手権に初出場したが1回戦敗退。同年の全日本選手権で初優勝。今年は4月のアジア選手権で優勝した。162cm。
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