※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《世界選手権へかけるシリーズ》
男子フリースタイル | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
男子グレコローマン | 55kg級 | 60kg級 | 66kg級 | 74kg級 | 84kg級 | 96kg級 | 120kg級 |
女 子 | 48kg級 | 51kg級 | 55kg級 | 59kg級 | 63kg級 | 67kg級 | 72kg級 |
(文=保高幸子)
2004年アテネ&2008年北京両オリンピックで松本慎吾(当時一宮運輸)が出場した男子グレコローマン84kg級。2010年12月の全日本選手権では、この階級の次代をになうと思われていた斎川哲克(両毛ヤクルト販売=その後96kg級に転向してロンドン・オリンピックに出場)を下して岡太一(自衛隊=右写真)が優勝した。
躍進するかと思われた岡だったが、2011年世界選手権(トルコ)に初出場するも初戦で敗退。翌年のロンドン・オリンピック出場はならなかった。そんな岡が、気持ちをリセットし、2016年リオデジャネイロ・オリンピックに向けての第一歩を踏み出そうとしている。
■どん底だった2011年秋から2012年夏
2011年の世界選手権敗退のあとは、どん底に落とされ続けた。同年12月の全日本選手権ではライバルともいえる同学年の天野雅之(中大職)に敗れてロンドン・オリンピック予選の正代表となれず。最後にチャンスが回ってきたがオリンピック出場はならず、出直しとなった2012年6月の全日本選抜選手権では決勝で天野にフォール負けを喫した。
しばらくは、「やめたい」と思うほどレスリングが辛かった。「ずっと、自分で自分を追い詰めていたんです。勝たなきゃ、勝たなきゃ、負けちゃいけない、と。その考え方のせいか、試合の時にはちょっと崩されただけで焦ってしまって、力を出し切れなかった」と振り返る。 2010年全日本選手権で期待の星、斎川を破って全日本王者へ
復活の兆しが見えたのは、ロンドン・オリンピックが終了してからだ。同年12月の全日本選手権では、同門の鶴巻宰(自衛隊)にフォール勝ちしての優勝だった。鶴巻は74kg級で長年トップを走り、10月の国体に1階級アップして参戦。全日本選抜選手権優勝者の天野を破って優勝していた。
「呪縛から解放された」と話す岡は、試合中に焦ることなく、相手がばてていることや嫌がっている攻撃がわかるようになった。以前なら焦りが出た場面でも「大丈夫、ポイントを取られたわけではない。いつも通りやれば勝てる!」と思えるようになった。「自分はこうやりたい」というビジョンを持てるようになった。
■リオデジャネイロ・オリンピックから逆算してステップアップ
今年4月のアジア選手権(インド)では2勝をあげて5位入賞。新ルールとなった6月の全日本選抜では、準決勝で天野を破った鶴巻を再び下して優勝し、世界選手権行きのキップを手に入れた。 スランプを乗り越え、今年のアジア選手権は5位入賞
リオデジャネイロに向けて、今年の世界選手権の目標は5位入賞。「今の時点では、まだ弱いと思っています。でも目標に向かって考えながらやっているので楽しいんです」と意欲が上がっている。周りのコーチや先輩と話す中で、自信のある技を磨き、場面場面での対処さえ体で覚えていれば焦らず自分のレスリングができると確信した。
新ルールで闘った全日本選抜選手権での反省から、今取り組んでいるのは技をかけるまでの組み手や崩し。スタンドでもっと取りにいかなければ勝てないルールだという。「ふだんの練習では、相手は取らせてくれるけど、試合ではそうはいかない。だからひとつを磨いて、世界選手権で入賞するために、必ず技をかけるところまで持っていく」と目標を掲げる。
「負けたらいけない。勝たなきゃいけない」から「勝ちにいくぞ!」と変わった岡は、リオデジャネイロ・オリンピックの栄光への階段を、すでに一段昇っている。世界選手権では二段目に進んだ姿を必ずや見せてくれるだろう。
岡太一(おか・たいち=自衛隊) 2大会連続2度目の出場
1988年4月5日、鳥取県生まれ、25歳。鳥取・鳥取中央育英高~柘大卒。2009・10年全日本学生選手権優勝、2010年は全日本大学グレコローマン選手権のほか、フリースタイルの2大会も勝って学生四冠王を達成し、全日本選手権でも優勝。2011年に世界選手権に初出場するも上位進出ならず。、ロンドン・オリンピック出場は逃した。今年はアジア選手権に出場して5位。182cm。
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◎岡太一の最近の国際大会成績
《2013年》
【4月:アジア選手権(インド)】=5位(12選手出場)
3決戦 ●[0-2(0-1,1-3)]Taleb Nariman Nematpour(イラン)
敗復線 ○[2-0(1-0,4-0)]Lin Ming-hsuan(台湾)
2回戦 ●[0-2(0-4,0-3)]Rustam Assakalov(ウズベキスタン)
1回戦 ○[2-1(0-2,1-0,2-0)]Harpreet Singh(インド)
【2月:ハンガリー・カップ】=17位(19選手出場)
1回戦 ●[0-2(0-2,0-1)]Vladimer Gegeshidze(グルジア)
《2012年》
【5月:ロンドン・オリンピック最終予選】=16位(26選手出場)
1回戦 ●[0-2(1-2,0-1)]Ara Abrahamian(スウェーデン)
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◎岡太一の世界選手権成績
【2011年(トルコ・イスタンブール)】=25位(47選手出場)
敗復1 ●[1-2(2-0,0-2,0-2)]Janarbek Kenjeev(キルギス)
1回戦 ●[0-2(0-1,0-1)]Alim Selimov(ベラルーシ)