2013.07.29

【全国少年少女選手権・特集】2年連続3兄弟で優勝! 松江クラブの田窪成将・育明・剛共

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

 全国少年少女選手権で大記録が生まれた。松江クラブ(島根)の田窪成将、育明、剛共3兄弟全員が2年連続同時優勝を決めた。6年生の+65kg級に出場した長男の成将は3連覇を達成し、小学生での有終Vも飾った。決勝では、佐々木偉琉(松﨑クラブ)相手にワンアクションでフォール勝ち。圧巻の優勝だった。

 快挙達成に、長男の成将は「うれしいです。プレッシャーもあったけど、3人で今まで頑張ってきて(勝つ)自信はありました。結果がついてくると信じて試合に出ました」と喜びの声。

 成将にとって自分の試合のほか、やることがもう一つあった。弟たちのまとめ役だ。「自分が一番上なので、2人の面倒を見たり、(2人が)ケンカしないようにしたりとかが大変だった。2人とも一生懸命僕についてきてくれました」と、3人が一体となってつかんだ2年連続3兄弟優勝だった。

■警視庁コーチの熱い応援の理由は?

 次男で4年生45kg級の育明と三男で2年生26kg級に出場した剛共は、ともに2連覇を達成した。決勝の試合順は次男、長男、三男。“おおとり”は三男の剛共だった。次男の育明は安定感があったが、剛共は「体重も軽くて体も細いから…」と、不安要素があった。

 その予感は的中。序盤では失点し、第1ピリオドの折り返しでは2-1と僅差だった。だが、第2ピリオドから調子を上げて最後は快勝。3人そろって笑顔で記念撮影に収まることができた。

 島根県在住の3兄弟の試合が始まると、セコンドには警視庁第六機動隊の関係者が自然と集まってきた。その中には全日本のコーチを務める田南部力コーチや豊田雅俊コーチなどの姿も。3人の優勝が決まると、自分の所属選手のように喜んだ。

 実は田窪3兄弟の父・隆範さんは島根県警に勤務する警察官で、7年前に警視庁に1年間、赴任した経緯がある。当時6歳、4歳、2歳だった3兄弟は、知人の勧めで警視庁の六機クラブでレスリングを始めた。母・真知子さんは「身体能力が高まるし、オリンピックや世界選手権で活躍した方たちに教えてもらうなんてめったにできないこと」と喜んでクラブに送り込んだそうだ。

■兄弟、家族の絆で勝ち取った偉業

 1年後、隆範さんが任務を終えて一家で島根に戻ることになった時、レスリングを続けるかどうか家族会議をした。その結論は簡単に出た。「六機キッズのみんなと全国大会で会えるから」と続行を決意。幸運にも近所に実績のある松江クラブがあり、3人はめきめきと力を付けた。

 昨年、三男が小学生に入り、3人そろって初めて全国大会に出た。真知子さんは「去年は初めて3人で出るから頑張ろうと思ったら、優勝できたんです。今年は長男が最後なので、3人で出る最後の大会だったから、やっぱり今年も頑張ろうと思って」と、家族全員でこの大会に照準を合わせてきたことを説明。来年以降、レスリングを続けるか未定とした成将も、「3人で勝つことが目標だった」と振り返る。

 3人が小学生でいられる2回のチャンスを、兄弟、家族の絆で勝ち取った偉業だった。