2013.06.04

【関東高校大会・特集】創部40周年の節目で復活優勝を支えた!…武田光司(埼玉・埼玉栄)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

(文・撮影=増渕由気子)

関東高校大会の学校対抗戦は埼玉栄(埼玉)が3階級を制覇し、霞ヶ浦と花咲徳栄の2強抑えて34年ぶりの団体優勝を遂げた。野口篤史監督が就任して初の快挙。閉会式後には野口監督が歓喜の胴上げで宙に舞った。

 監督の次に胴上げコールで迎えられたのが主将で今大会84kg級で悲願の初優勝を決めた武田光司だ。今大会はレスリングのオリンピック除外問題を受けて緊急に導入された新ルールが適用された。武田はそのルールの特性を生かし、第1ピリオドから全力で攻めて全試合第1ピリオドで勝負を決めた。

 決勝はタックルやローリングを決め、蛭田瞭平(茨城・霞ヶ浦)を8-0で下して優勝。フォール2試合、テクニカルフォール2試合で、全試合無失点の完全勝利だった。「今年は創部40周年の節目。その時に関東制覇ができてよかった。チームに流れがきているので、今月15日のインターハイ予選で花咲徳栄に勝ってインターハイに行きたいです!」と宣言した。

■骨折で1カ月マット練習から離脱 それでも全国優勝したタフマン

 武田は3月末の全国高校選抜大会(新潟市)で優勝したが、今季のすべてが順調だったわけではない。2月の関東高校選抜大会で試合中にあばら骨を骨折してしまい、全国大会の出場権(ベスト8)を取って棄権。「2月はマット練習ができなかった」と、約1ヶ月も棒に振ってしまい、全国王者という目標は非常に厳しい状況に追い込まれた。「優勝は(一時)あきらめていました」。

だが武田は再起した。その原動力は全国中学生王者の肩書を持って4月に入部してきた50kg級の吉村拓海と74kg級の山崎弥十朗の存在だ。「(主将として)後輩の指導をしているが、口だけの先輩になりたくなかったんです」。

 1ヶ月ものブランクは大きかったが、チームの主将として後輩たちの前でこれ以上、格好悪い姿を見せるわけにはいかなかった。「気持ちで勝ち抜きました。いつも後輩たちに気持ちで負けるなと言い聞かせているので」と、ブランクを乗り越えての全国の頂点だった。

■新ルールは武田の味方 最初から飛ばせる!

今大会は圧勝の勝利だった。オリンピック場外問題を受けて改正された新ルールは、武田の味方となった。武田は、「グランドは返す自信がある。テークダウンの後に展開ができるので有利なルール」と分析する。

 今までは、第1ピリオドで6点以上獲得してテクニカルフォールで取っても、第2ピリオドは相手に逃げられてクリンチに持ち込まれるというケースがあった。新ルールでは、テクニカルフォール(新ルールは7点差)で試合そのものが終了するので、技の出し惜しみすることなく序盤から攻めて短時間で終わらせることができる。「自分に合っていると思う」と笑顔を見せた。

 3月の全国高校選抜大会、今大会の個人と団体優勝を収めた武田が見据える次の目標は、インターハイ団体出場だ。「そろそろ団体で出たいです」と、昨年のインターハイ優勝チームの花咲徳栄との決戦に気持ちを切り替えていた。