※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【サンクトペテルブルグ(ロシア)、ビル・メイ】予定の5月29日午後8時半(日本時間30日午前1時半)より1時間早まって行われた国際オリンピック委員会(IOC)理事会の記者発表。追加競技の最終候補として、真っ先にレスリングが発表された瞬間、日本から出席した福田富昭会長や馳浩副会長ほか、関係者全員が歓声を挙げ、ガッツポーズや抱き合って喜びを分かち合った。
福田会長は、喜びの中にも「9月(総会=アルゼンチン)が決勝だ。もう一度気を引き締めて、最後の戦いに挑みたい」と話した。女子55kg級でオリンピック3連覇を達成し、3個の金メダルを持ってロビー活動に力を入れた吉田沙保里選手(ALSOK)は「ひとまず良かった。うれしいです」と安どの表情。「涙が出そうになった。みんなですべてやりきった感じがある。100万人近い署名が力になった」と続け、「この勢いで9月の闘いに臨みたい」と話した。
30日未明にロシアからの朗報を待っていた吉田の恩師、栄和人・日本協会女子強化委員長(至学館大教)は、発表のあと、「まだ気は抜けないが、(署名の)94万人の気持ちが伝わった」と話すとともに、吉田が来月に世界選手権代表のかかる大会出場を控えているにもかかわらず、嫌な顔ひとつせずにサンクトペテルブルグへ渡って精力的なロビー活動をしてくれたことに感謝。「涙が出るほどの気持ち。世界のレスリング界を守るために尽力してくれた。9月に向け、もう一度頑張ってほしい」と続け、教え子の労をねぎらった。
30日朝に都内で会見をした日本協会の高田裕司専務理事も、レスリングの除外問題が世間から大きな関心をもたれたのは、「去年10月に吉田が国民栄誉賞を受賞したことで、レスリングの存在が世間に知れ渡り、今回の大きな関心、支援につながった」と分析。メディアの関心や94万人の署名にはじまる大きな支援を得たのは、吉田の功績が大きいことを強調した。