※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
胴上げされる三島主将
昨年は春秋ともに2位、あと一歩で昇格を逃していたこともあり、九州共立大のベンチは盛り上がり、4年間チームを支えた三島涼太郎主将が胴上げで宙を舞った。
元全日本学生王者の藤山慎平コーチは、「(昨季は両季ともに2位で)やっぱりリーグ戦は勝つのが難しいと思った。今回もポイントゲッターでアジア・ジュニア選手権代表の柏本心が負傷し、予定通りいかない部分があったが、みんながよく頑張ってくれた」とチームの総合力を評価した。
■初日も大勝するも、コーチは激怒「スキを見せたくなかった」
初日は三島主将の調子が今ひとつ。チームは勝ったものの、主将は関西学院大、天理大戦と連敗。昨年からようやく全階級のエントリーができるまで選手層が厚くなり、総合力は二部でダントツだが、藤山コーチは一ミリたりともすきをを作りたくなかった。
関西学院大は5-2、天理大戦は6-1と大勝したにもかかわらず、主将の敗退を見逃さず、試合後は全選手の前で「何やってるんだ! お前のためにやってるんだ!」と雷を落とした。
藤山コーチは「油断させたくなかったし、(他大学に)すきを見せたくなかった」と、主将に激を飛ばした経緯を振り返る。2季連続2位のあとの3度目の正直のチャンスをどうしても生かしたかったからだ。
さらに言うと、創部は2009年だが、三島が事実上の一期生。藤山コーチは「今大会、三島のためにみんな闘ったんです。4年生が一部リーグに出場するには、この春優勝しないとならなかった」と振り返った。
霞ヶ浦出身の同志社大・和智をフォールで下した74kg級の椿(青)
そんな三島主将が目を覚ましたのは決勝の舞台だった。決勝は96kg級、120kg級、55kg級、74kg級、60kg級、66kg級、84kg級の順で行われた。同志社大はこの春、茨城・霞ヶ浦高から和智健悟(74kg級)、埼玉・花咲徳栄から榎本凌太を獲得。高校界で“2トップ”と言われる強豪から戦力を補強した。
伝統があり、さらに大型新人を補強した同志社大相手に、九州共立大は1番手と2番手と2連敗を喫してしまう。「2番手のポイントゲッターである120kg級を落としたときは、まずいと思った」と藤山コーチ。
そんな初優勝に黄色信号が灯った危機を回避したのが、3番手の三島主将だった。タックルからのローリングなど技を鮮やかに決めて2-0と快勝。そこからチームは3連勝し、完全に流れを九州共立大に引き寄せた。
6番手の66kg級は落として3-3のタイになったが、流れは完全に九州共立大がさらっていた。7番手の濱口がタックルから切り崩して2-0と快勝し4勝目。藤山コーチの悲願が達成された瞬間だった。
優勝を決めた九州共立大メンバーは、すぐさま三島主将を胴上げしたが、藤山コーチは「俺は二部(での優勝の時)はいい。一部で優勝した時」と辞退。すぐに「次の目標は一部優勝。(このチームなら)闘えると思う」と、初昇格初優勝に意欲を見せていた。(注=同リーグは入れ替え戦なしで、一部最下位と二部優勝が自動的に入れ替わる)
![]() 優勝を決め、喜ぶ藤山コーチ |
![]() 秋季は一部リーグで闘う九州共立大 |