※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
田中部長の遺影と池松コーチ
福岡大は、昨年度まで西日本学生連盟の会長を務め、この4月から全日本学生連盟の会長に就任した田中忠道部長が急逝したばかり。昨年秋にヘッドコーチとして就任した元全日本王者の長島和幸コーチも闘病中で不在という状況。2004年アテネ&2008年北京両オリンピック代表でこの4月に就任した池松和彦コーチは「現在は生徒を毎日指導できる体制が整っていない」と話した。その影響が出たのか、リーグ初日は徳山大に3-4で競り負けて優勝戦線から離脱したかに見えた。
■グループ2位の発表に、コーチ陣が質問「勝ち点同じではないか?」
だが、その後の近大戦は4-3、最終日初戦の桃山学院大戦は7-0と快勝し、グループ2勝1敗で徳山大学と勝敗、勝ち点、内容まで同率。フォール数の差で福岡大がグループ1位となった。
実は当初、「勝ち点の差で2位」と発表されていた。だが、福岡大の笠井晋吾コーチが気づいた。「勝利数が同じで、フォール数は福岡大が多いのに、勝ち点にそんなに差がでるのかな…」。手元で再集計し、勝ち点が同じであることを本部に指摘したのだ。
学連が再調査した結果、笠井コーチの申し出が正しいことが判明し、急きょ順位が入れ替わり福岡大の1位が確定した。池松コーチは「グループ1位の原動力は1年生かな。74kg級の花山尚生(愛媛・八幡浜工高卒)はフル出場だったと思う。みんな、よく頑張った」と新人たちの“フル稼働”に労をねぎらった。
故田中部長が見つめる中で闘う選手(写真は66kg級の菅原翔太)
決勝は中京学院大に3-2と先に王手をかけるなど、王者を追い詰めた。勝負を任された7番手(60kg級)は1年生の元田大勇(鹿児島・鹿屋中央高卒)。だが、決勝の舞台の最終戦は、「荷が重かったのだろう」と池松コーチ。中京学院大3年生の津田孝司郎相手に、第1ピリオドを奪うも、1-2と逆転負け。10季ぶりの福岡大優勝はならなかった。
だが、昨季7位から2位と大躍進したことは、亡くなった田中部長に「最低限の報告はできた」と池松コーチは言う。笠井コーチはまだ現役選手であり、指導より自分の練習がメーン。他のコーチも大学院での勉学が主のため、指導陣は現在手薄だ。
池松コーチは「私も現在、週2日ほど練習を見ている程度です。田中部長が亡くなり、長島コーチも不在なので、その間は自分ができるだけサポートしていきたい」と話し、今後の福岡大の強化に力を注ぐことを宣言。秋季での飛躍を誓った。