※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫)
東日本学生リーグ戦で、昨年まで4年連続で決勝に進んでいた拓大は、Bグループ予選の最終戦で早大に敗れ、5年ぶりに決勝を“観戦”することになった。
西口茂樹部長はこの4月から日本協会の男子グレコローマン強化委員長に就任。4月から5月初めにかけて2度の全日本合宿とアジア選手権(インド)遠征で不在が多く、その影響も考えられるが、伊藤啓太コーチや江藤紀友、高橋龍太(ともに拓大OB~自衛隊)といったOBがしっかり見てくれたので、その影響はない」ときっぱり。
120kg級で活躍した園田新
敗因は、要所でネガティブな気持ちが出てしまったこと。全日本選手と同じく、「気持ちの面で強化しなければならないことが多い。全日本も拓大も同じところが弱点」と振り返った。ここを強化するために「選手との信頼関係が必要。本人が積極的に挑んでくれるようにもっていきたい。乗り越えられない試練ではない」ときっぱり。
明るい材料としては、60・66kg級には高谷大地(京都・網野高卒=ロンドン・オリンピック代表の高谷惣亮の弟)が4戦全勝、120kg級には園田新(滋賀・日野高卒)が4戦全勝と、1年生が活躍したこと。特に“スーパーヘビー級”と言える見事な肉体を持つ園田は、早大戦では、専門はグレコローマンとはいえ、全日本大学王者にも輝いている前川勝利を破る殊勲を挙げた。
しかし西口部長は「今回、たまたま勝ったようなもの。馬力は前川の方がありますよ」と厳しく言い放ち、「あの内容では、2人ともオリンピックには行けない」と、冷静に振り返った。
その120kg級に、山梨学院大にカザフスタンからの留学生オレッグ・ボルチンが加わり、今回のリーグ戦は圧倒的な力を見せた。来年からの3年間はかなり厳しいリーグ戦になることが予想されるが、「いえいえ、うれしいことです」-。
強豪選手が国内にいることで身近に目標ができたことになり、園田や前川のみならず、96kg級の大坂(早大)ら重量級の選手のレベルアップが期待されるからだ。「84kg級の選手のためにもなる。彼を破ればオリンピックだ、と思って競い合ってくれればいい。山梨はいい選手を引っ張ってくれました」と、全日本の強化委員長の顔になり、日本全体の底上げを誓った。